リーンロジスティクスとは、トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)をルーツとする「リーン生産システム」の考え方を物流領域へ応用した概念です。
英語の Lean(贅肉のない・引き締まった)を語源とし、物流・倉庫・サプライチェーン全体を「無駄が排除された状態」へ最適化することを目的とします。
リーンロジスティクスの根幹は、トヨタ生産方式が定義する「7つのムダ」の排除です。このムダの概念は製造現場にとどまらず、物流・倉庫業務にもそのまま適用できます。
| 7つのムダ | 物流・倉庫での具体例 |
|---|---|
| 加工のムダ | 不要な工程・重複作業 |
| 在庫のムダ | 過剰在庫による保管スペース・管理コストの増大 |
| 作りすぎのムダ | 不要な梱包・余剰在庫の作りだめ |
| 手待ちのムダ | トラックの荷下ろし・ピッキング待ちなどの待機時間 |
| 動作のムダ | 倉庫内の無駄な動き・効率の悪い作業 |
| 運搬のムダ | 非効率な動線・迂回ルートでの搬送 |
| 不良のムダ | 誤出荷・破損による手直しや破棄などの対応 |
中でも「作りすぎのムダ」は、在庫の膨張・余分な保管・不要な運搬を連鎖的に生み出すため、物流コンサルティングの現場でも最優先すべき改善対象と言われています。また、「手待ちのムダ」は、現場に潜む問題を可視化するシグナルとなります。
現場の状況を分析して、課題やKPIに応じて優先順位をつけ、サプライチェーンの全体最適に向けて無駄を排除していくことが重要です。
リーンロジスティクスを物流・倉庫の現場に落とし込む際、以下3つの手法が中心的な役割を担います。
トヨタ生産方式の「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ」という考え方に基づく手法です。
物流の現場では過剰在庫と欠品の両方を抑制します。
適正な在庫管理はは保管スペースと在庫管理コストの削減に直結し、物流コスト全体の圧縮につながります。
参考:
TOYOTA 「トヨタ生産方式」
https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/production-system
リーン生産方式から生まれた、プロセス全体を図示し「見える化」する手法です。
物流プロセス全体のどの工程に手待ち・過剰在庫・重複作業が潜んでいるかを一枚のマップに描き出し、改善の優先順位を明確にします。
「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5Sは倉庫業務における動線改善・ピッキング精度向上の土台となります。また、カイゼン※と組み合わせることで、輸送効率の底上げを組織全体で継続的に進めることができます。
※カイゼン:トヨタ自動車発祥の「現状に満足せず、今よりもっと良くする」という概念。「現状に問題がなくても、さらに価値が高いことができるように、作業や業務の方針・やり方を変えていく活動」を意味する。元々は製造業の生産現場で使われていたが、今では海外でも「KAIZEN」と表現され、業界・業種問わず使われている考え方。
参考:
KAIZEN BASE 「カイゼンとは?改善やKAIZENとの違いや5S活動・トヨタ生産方式との関係」
https://kaizen-base.com/column/31127
リーンロジスティクスを物流・倉庫の現場に落とし込むことのメリットと留意すべき点を紹介します。
物流・倉庫業務への導入では、以下4点のメリットが期待できます。
①輸送効率・作業効率の向上:
ムダな動作・工程の排除により、倉庫内作業と輸送効率が向上します。
②在庫削減と保管コストの低減:
JITと連動した在庫管理で過剰在庫を圧縮し、倉庫スペースと管理コストを削減します。
③リードタイムの短縮:
受注から納品までの時間が短縮され、サービスレベルの向上につながります。
④物流コストの最適化:
各工程の改善が積み重なり、サプライチェーン全体のコスト構造を改善します。
一方で、以下3点に留意が必要です。
①初期投資が発生する:
業務プロセスの再設計・システム導入・従業員教育に一定のコストと期間がかかります。
②サプライチェーンの途絶リスク:
在庫バッファを絞るほど、自然災害や輸送遅延が発生した際の供給途絶リスクは高まります。緊急時を想定した代替調達ルートや在庫水準などの設計と共有が必要です。
③現場定着に時間を要する:
5Sやカイゼンは組織全体での継続的な取り組みが不可欠です。一度に大幅な改善をするとかえって混乱を招くことがあるため、小さな改善を積み上げる進め方が現実的です。