クロスドッキングとは、複数の仕入先から入荷した貨物を物流センターに一時的に受け入れした後、在庫として保管することなく、そのまま仕分けをして即座に出荷する仕組みです。
クロスドッキングの名称は、物流センター内の荷受け場(ドック)から出荷場(ドック)へと、荷物が「交差(クロス)」するように仕分けを行い、通過していくことに由来します。物流倉庫や物流拠点における一般的なプロセスが、入庫→保管→(流通加工)→ピッキング→検品→梱包→出荷といった工程を経ることに対し、クロスドッキングは「入荷→検品→仕分け→出荷」と少ない工程で行われます。
クロスドッキングはTC(Transfer Center:トランスファーセンター)と呼ばれる在庫を持たずに商品を仕分けして通過させる物流センターで行われることが多いです。TCでは持ち込まれた商品を、店別・方面別に仕分けし、納品先の店舗などに一括して出荷します。
日本産業規格 『JISZ0111:2006 物流用語』ではクロスドッキングについて以下のように定義されています。(※)
5015 クロスドッキング 物流センターの荷受場(ドック)で,入荷品を事前出荷通知に基づき保管するか出荷するか識別して,出荷品を出荷場(ドック)に通過(クロス)させること。 |
(※)引用:JISZ0111:2006 物流用語
https://kikakurui.com/z0/Z0111-2006-01.html
クロスドッキングでは、在庫を持たないことによって、リードタイムの短縮と物流コストの削減が可能です。保管にかかるスペースコスト、人件費、管理費用の大幅な削減につながります。
また、開梱作業やピッキング作業、棚卸作業が不要なため、作業効率向上も期待できます。さらに、過剰在庫によるリスクを回避し、賞味期限や消費期限が短い商品、季節商材など「足の早い商品」を高い回転率でスピーディーに流通させることが可能です。
特に、クロスドッキングはEC市場において、配送の細分化に対応でき、地方の物流拠点に展開する際の効率的な運用方式として注目されています。また、宅配便業界では荷姿を維持したまま方面別に仕分ける際の中継拠点として活用されています。
2024年4月から施行されたトラックドライバーの時間外労働の上限規制により、長距離輸送における中継輸送の重要性が高まっています。遠距離を一人のドライバーが一気通貫で輸送することが難しい場合、発地と着地の中間地点に中継輸送拠点を整備し、輸送を引き継ぐ方式が中継輸送です。こうした背景から、クロスドッキング機能を持つ中継輸送拠点の整備が推進されています。これらの拠点では、従来の積み替え機能に加え、バース予約システム、自動フォークリフト、AI活用による効率化などが導入されています。2024年問題への対応策として、クロスドッキングの理解と活用は必要不可欠な要素です。