第2回 「在庫はどこに配置する?」適正な在庫配置とは

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第2回 「在庫はどこに配置する?」適正な在庫配置とは

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第2回 「在庫はどこに配置する?」適正な在庫配置とは

公開 :2022.08.22 更新 : 2023.06.01

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在庫をどこに配置するか。前回のコラム「『切らさない、余らせない』頭悩ます適正在庫」では「数」の視点から在庫について記しました。今回は在庫を配置する「場所」について、拠点(倉庫)の視点から記します。適正な拠点に在庫配置をおこなう際のポイントは何か。飲料メーカーで飲料用原料のSCM(サプライチェーンマネジメント)の職務に長らく従事してきた筆者の経験をもとに、在庫配置についてお伝えします。

そもそも、その倉庫に置けるのか、在庫配置の前提

在庫をどこの拠点(倉庫)に配置するのが適正か。まずは前提となるのは貨物が求める5つのポイントを、拠点(倉庫)が満たしているか確認することが必要です。

1.品質面:要求される温度帯(常温、定温、冷凍、冷蔵)に対応可能か。
危険品庫など貨物の特性に応じた施設があるか?
2.保管能力:要求される物量を保管できるスペース、キャパシティはあるか?
3.入出庫能力:入出庫バース(トラックが接車し、貨物の積み降ろしをおこなう場所)の数やエレベータの数。
1日あたりのトラックの受け入れ台数など。
4.距離:納品先の顧客や自社工場、ハブとなる倉庫、空港や輸出入の港からの近いのか、遠いのか?
距離は輸送コストの増減に関係します。
5. 利便性:必要な マテハン (フォークリフトなどのマテリアルハンドリング機材)の有無、流通加工の対応可否は?

上記のポイントは在庫配置をおこなう上での前提となります。例えば、冷凍品を常温庫におけば、当然ながら融けてしまい品質を担保できません。危険品は、安全措置がなされた危険品庫に保管しないと法令違反になります。必要な保管スペースがないと追加コストが発生し、距離の遠近は輸送費に影響を与えます。残業時間の抑制が厳しい中、就業時間内に対応できる受け入れ能力も大切なポイントです。

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どの倉庫に配置するか、在庫配置の考慮点

前述の前提を考慮した上で、どの拠点に在庫を配置するかを考えてみます。

 ハブ&スポーク方式 (中心のハブとなる倉庫と、ハブを中心とした複数の倉庫)の場合を想定します。東京の ハブ倉庫 と、地方の拠点倉庫のイメージです。この場合、貨物は一旦ハブとなる倉庫に入庫し、在庫にカウントされます。その後、複数ある地方の拠点倉庫に転送され最終的に顧客に納品される流れとなります。

しかし、例外となるケースもあります。例えば、冷凍品や危険品の取り扱いがあるのに、地方の拠点倉庫に冷凍庫や危険品庫がない場合です。この場合は ハブ倉庫 から直接顧客に納品するケースが発生します。こうしたケースでは、貨物はハブの倉庫に集約して在庫配置します。

地方の拠点倉庫に在庫を配置する際に、考慮するポイントは在庫量と転送頻度です。

1.在庫量について

まず、在庫量は適正な数量で在庫配置をおこなう必要があります。必要量以上に地方の拠点倉庫に在庫配置をおこなうと、顧客への出荷が停滞したり、需要が低下した際に過剰在庫となる可能性があります。在庫消化の見込みが立たなくなった場合、再び ハブ倉庫 へ戻したり、他の拠点倉庫へ転送して消化するなど、オペレーションとコストのムダが発生します。

特に賞味期限がある貨物の場合は注意が必要です。滞留した在庫を、消化できる拠点倉庫へ転送しようにも、タイミング良くトラックが手配できるとは限りません。転送が間に合わず賞味期限切れとなり、廃棄された場合はムダなコストが発生します。

 ハブ倉庫 と地方の拠点倉庫の在庫配置は、常に全体の状況をモニターする必要があります。

在庫の偏在や賞味期限切れのリスクを把握しながら、最適な在庫配置をおこないます。需要は常に変動します。在庫配置の計画時には最適と判断しても、時間とともに変化します。利用見込みのない在庫配置をすると、輸送と保管の無駄なコストが発生します。

2.頻度について

次に頻度です。在庫配置をする際、ハブの倉庫から地方の拠点倉庫へ転送します。転送頻度が少ない方が、輸送コストや入出庫料のコスト削減ができます。

一方、転送頻度が多い場合、輸送コストは上昇し、トラックの積載率をあげるために転送量が増加し、結果として在庫配置の量も増えてしまうことがあります。 貨物の量と頻度はトレードオフ(両立が困難な関係性)の傾向にあります。輸送と保管のムダを減らしていくように、PDCAを回しながら最適な量と頻度を算出するなど、積合せの工夫が必要となります。

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在庫配置を考える時の距離、時間、コストについて

1.距離について

拠点倉庫と顧客の距離が近い場合、顧客への納品頻度をあげることができます。また、トラブルなどによる交換品を迅速に納品できるといった利点があります。一方、距離が遠い場合は、納品までのリードタイムが長くなることや、納品頻度が低下する傾向にあります。トラブルによる交換などが発生した場合は、迅速な納品が困難になり、顧客の製造スケジュールに影響を及ぼす可能性があります。そのため、安全在庫を配置する必要があります。

2.時間について

在庫配置を考える際の必要な時間について記します。 ハブ倉庫 から地方の拠点倉庫に転送する場合、輸送のリードタイムを考慮する必要があります。特に注意が必要なのは、北海道や沖縄など、陸続きでないエリアです。フェリーを利用する場合、台風や低気圧の影響を大きく受けます。台風が通過しても海上にはシケが残り、出航できないケースもあります。

こうしたケースでは通常のリードタイムより時間を要するので、地方の拠点倉庫で欠品を起こさぬよう早めの対応が必要です。台風の季節は長期予報を確認しながら、一週間前倒しで転送するなどの準備が必要です。しかし、どこの荷主も同じ事を考えますので、フェリーの予約が既に一杯といった状況も発生します。早め早めの情報収集と関係者への情報共有も必要です。

3.コストについて

短い納期は顧客満足度をあげることができます。そのためには、顧客から近距離の拠点倉庫へ在庫配置することが有利となります。一方、顧客から遠距離にある拠点倉庫から納品する場合、輸送時間が長くなり輸送コストが上昇します。例えば ハブ倉庫 から遠距離の顧客に直接納品するようなケースです。

在庫配置を考える際、輸送と保管、顧客ニーズと物流コスト、業務負荷と利便性など、異なる要件間でトレードオフの関係が発生します。物流のオペレーションは相反する要素で成り立っていることが多いのです。

自動化が進んでいるとはいえ、まだまだ属人的な領域が多い物流分野では、顧客の要求に応えようとするほど、コストアップになる傾向にあります。すべてのニーズを満たすためには困難が伴います。何らかの要件が損なわれる可能性があるため、優先すべき要件を明確にして、オペレーションの適正化を図っていくと良いでしょう。

今後の在庫配置を考える時の大切なポイント

大切なポイントがあります。現在、日本では少子高齢化の進行や、運送業界の厳しい労働環境により、トラックのドライバーが減少しています。一方でEC市場の拡大によるBtoCの輸送需要は急増しています。輸送の需要に対して、供給能力が不足し、物流インフラの維持が困難になってきています。そもそもモノが運べないといった状況が深刻化してきているのです。

加えて、物流の2024年問題が予見されています。2024年問題とは働き方改革関連法によって、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用され、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されます。このため、トラックドライバーの減収や離職、運賃上昇などの問題が発生すると言われています。従来の様に貨物を輸送できなくなる可能性があるのです。

自動運転やドローンなど、新たなテクノロジーの研究がされていますが、実際の運用までにはまだまだ時間が必要です。そのためにはトラック1台あたりの積載率を最大化し、且つ輸送頻度が少なくても可能なオペレーションが大切になってきます。2024年問題を考慮しつつ、輸送手段の確保を優先した視点で、在庫配置を考えることも必要ではないでしょうか。

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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