今回は、輸送サイズの大型化についてお話しします。
燃料価格が高止まりしている昨今、物流コストに頭を悩ませている方も多いと思います。
そこで、輸送コストの削減案の1つとして、輸送サイズの大型化について検討してみませんか?
この記事では、「輸送サイズの大型化とは何か」、「輸送サイズの大型化によってどのような効果を期待できるのか」、「どのようにして輸送サイズを大型化するのか」を解説していきます。
2024年問題やSDGsへの対応策としても有効なので、物流に関するこれらの課題を抱えている方は是非チェックしてください。
本記事では、次のような内容に沿ってお伝えします。
目次
1.輸送サイズの大型化について
この記事における輸送サイズの大型化とは、輸送効率向上のために一度に輸送できる最大貨物量を従来よりも増やすことです。一般的には、輸送サイズを大型化することで輸送効率が向上するとされています。
その理由として、貨物の輸送に必要なドライバー人員を削減することにより、輸送回数を少なくし、燃料コストを抑えることができるため、などが挙げられます。初期投資が不要な上、貨物の種類も問わないため、物流コストを削減したい多くの荷主にとって検討しやすい対策の1つです。
ただし、すべての輸送ケースにおいて輸送サイズの大型化が適しているとは限らないので、個々の事情を勘案して総合的に判断する必要があります。
2. 輸送サイズの大型化で期待できる効果
輸送サイズの大型化によって、次の3つの効果が期待できます。
1.輸送コストの削減
輸送サイズの大型化によって、輸送コストの削減が期待できます。一度に積載できる貨物の量が増えることで、輸送のために必要な運用車両台数を減らせるので、燃料コストなどの削減ができます。 原油価格が高騰している昨今、燃料コストの削減は事業面で大きなメリットとなります。
2.2024年問題(ドライバー不足)への対策
輸送サイズの大型化は、2024年問題への対策としても有効です。
2024年問題とは、2024年4月から働き方改革関連法が適用となり、自動車運転業務に従事する労働者の労働時間に上限規制が定められることによって、物流業界に及ぼされる様々な問題の総称のことです。
その問題の1つとして、ドライバー不足の深刻化が懸念されています。
2024年4月の法施行準備段階の現在でさえ、人手不足から輸送会社が顧客の輸送依頼に対応できなくなり、輸送料金の大幅な値上げを荷主に要請したり、依頼自体を断ったりする事態が発生しています。 輸送サイズの大型化によって輸送に必要なドライバー人員を減らすことができるので、輸送会社との安定的かつ継続的な取引関係を維持するためにも、荷主の立場として検討したい課題です。
3.SDGs(環境問題)への対策
輸送サイズの大型化は、SDGsへの対策としても有効です。
SDGsとは、持続可能な社会を目指すために、2015年の「国連持続可能な開発サミット」で決められた17の目標のことです。その中の1つにエネルギーに関する目標があり、エネルギー効率の改善を目指す内容があります。(SDGs7.a)輸送サイズの大型化は、輸送のために運用する車両台数を減らすことにより燃料の削減に繋がるので、環境保全の面でも優れた取組みです。
3. 輸送サイズの大型化の具体例
では、どのようにして輸送サイズを大型化するのか、具体例を3つ紹介します。
1.トラック車両の大型化
まず1つ目は、トラック車両の大型化です。
例えば:2tトラックから4tトラックへ、4tトラックから10tトラックへの変更をする場合
トラック車両にもよりますが、一般的には1.1m幅のパレットの場合、2tトラックでは4枚、4tトラックでは10枚、10tトラックでは16枚を積載できる広さがあります。
仮にパレット32枚分の貨物を輸送するとき、2tトラックでは8台、4tトラックでは4台、10tトラックでは2台が計算上の最低必要台数となります。
トラック車両が大きくなればなるほど、一度に輸送できる貨物量が増えるため、輸送効率が向上します。何らかの支障がなければ、現状よりも大きなトラック車両の手配を検討してみましょう。
2.20tトレーラー車両への大型化
2つ目に、20tトレーラー車両への大型化です。
例えば:4tトラックや10tトラックから、20tトレーラーへ変更をする場合
トレーラー車両にもよりますが、一般的には1.1m幅のパレットの場合、20tトレーラーでは24枚を積載できる広さがあります。
仮にパレット48枚分の貨物を輸送するとき、10tトラックでは3台、20tトレーラーでは2台が計算上の最低必要台数となります。
20tトレーラー車両はトラック車両よりも一度に輸送できる貨物量がさらに増えるため、輸送効率が向上します。こちらについてもトラック車両の大型化と同様に、何らかの支障がなければ、20tトレーラー車両の手配を検討してみましょう。
3.海上コンテナの大型化
3つ目に、海上コンテナの大型化です。
一般的に使用される海上コンテナのサイズは、20FTと40FTの2種類があります。(仙台港など一部の地域では45FTコンテナも使用されていますが、日本国内ではまだ主流ではありません。)
例えば:20FTコンテナから40FTコンテナへの変更をする場合
海上コンテナであれば、1.1m幅のパレットの場合、20FTでは10枚、40FTでは20枚のパレットを積載できる広さがあります。
仮にパレット20枚分の貨物を輸送するとき、20FTコンテナでは2本、40FTコンテナでは1本が計算上の最低必要本数となります。
40FTコンテナは20FTコンテナの2倍の量の貨物積載が可能で、一度に輸送できる貨物量が増えるため、輸送効率が向上します。全体の輸送コストとしても、同じ貨物量を輸送するのであれば、40FTコンテナの方が抑えられるケースがほとんどです。(※重量の重い貨物である場合を除きます。) 可能な場合は40FTコンテナへの変更を検討してみましょう。
4. 輸送サイズの大型化検討時の注意点と具体例
最後に、輸送サイズの大型化を検討する際に注意すべき点を紹介します。
輸送サイズを大型化したものの、物流業務に支障が出てしまうケースもありますので十分注意しましょう。
1.通行道路の幅
輸送サイズを大型化すると、従来よりも車両が大きくなります。車両の長さはもちろん、幅が広くなる場合もあります。輸送先が住宅密集地など道幅の狭い場所を通る場合、車両が道路を通行できず現地まで貨物を輸送できない可能性があります。そのような事態にならないよう、手配する車両が通行できる道幅であるかどうかは事前に確認しておく必要があります。
2.重量制限
トラック車両、トレーラー車両、海上コンテナには、それぞれ積載できる最大重量が定められています。例えば日本国内の海上コンテナ輸送であれば、3軸シャーシの場合、20FTでは最大24,000kgまで、40FTでは最大30,480kgまでとなっています。40FTコンテナは20FTコンテナの2倍の広さがありますが、最大積載可能重量は2倍とはなりません。重量の重い貨物を輸送する場合には、容積だけでなく重量にも十分注意しましょう。
5.輸送サイズの大型化のまとめ
今回は輸送サイズの大型化について紹介しました。
輸送サイズの大型化は、物流コスト削減、2024年問題やSDGsへの対策なども兼ねるため、多くの荷主にとって検討しやすい取組みの1つです。輸送サイズを大型化した場合に輸送効率がどの程度向上するか確認してみましょう。ただし、すべてのケースにおいて輸送サイズの大型化が適しているとは限りませんので、まずは物流コンサルタントへ相談してみることをおすすめします。
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