目次
1.はじめに
みなさま、こんにちは。今回は、倉庫業務の効率化について取り上げます。
倉庫業務の関係者であれば、倉庫稼働コストを削減し、売上向上のために、現在の業務フローを改善、効率化したいと悩んでいる方も多いと思います。
本コラムでは、様々な倉庫業務フローの改善方法を紹介していきます。是非、参考にしていただき、倉庫業務効率化を目指してください。
2.どのような方法があるか
倉庫業務に限らず、業務の効率化を目指すのは営利企業であれば当然です。効率化を目 指す方法としては、倉庫業務の担当者がすぐに取り掛かれるものから、会社として大規模 な投資が必要となるものまで、様々です。
方法1.マテハン機器の導入
マテハン機器は、物品の運搬を行う機器や人が行う作業をサポートする機器です。倉庫業務においては、自動搬送ロボット、自動垂直搬送機、フォークリフトなどがこれにあたります。
倉庫業務効率化の観点では、マテハン機器の導入は大きな効果を期待できます。例えばフォークリフトは、人力に比べて一度に多くの量を短時間で運搬することができます。
しかしながら、マテハン機器の導入には多額の初期投資が必要となるケースがほとんどです。 多額の導入コストがかかり、当初期待していたほどの効果が得られなかった場合、マテハン機器の導入が逆にその企業にとって大きな負担となるリスクがあります。
マテハン機器の導入にあたっては、どれほどの効果を得られるのか慎重に検証すること が大切です。また、マテハン機器の段階的な導入や、購入ではなくレンタルにするなど、なるべくリスクを低く抑える導入方法を検討する必要があります。
方法2.WMSの導入、更新
WMSとは、Warehouse Management Systemの略で、倉庫管理システムのことです。在庫管理や入出庫管理などがシステム化されます。正確かつスピーディに商品を管理でき、倉庫業務の効率化に繋がります。手書きやエクセルでの在庫管理も可能ではあるものの、やはり正確性やスピード性ではWMSに劣ります。取扱う商品の数量や種類が多い場合にはWMSが適しており、導入によって効率性の向上が期待できるでしょう。
しかしながら、WMSの導入にもコストがかかります。初期費用、月額利用料、その両方が発生することが一般的です。優秀なWMSであってもあまりに高額であったり、必要以上に機能を備えたWMSであったりする場合は、効率化を図れない場合もあります。WMSにも色々な種類がありますので、業務に適したシステムを選択することが重要です。
ただし、筆者としては必ずしもエクセルでの管理に否定的ではありません。実は大手倉庫企業であっても業務によってはエクセルで在庫管理をしているケースがあり、筆者自身もその経験があります。入出庫件数やSKU数が多い場合にはエクセルでの管理は難しいと思われますが、手軽さという観点では素晴らしく、必ずしも排除はできない管理方法です。
方法3.倉庫レイアウトの見直し
倉庫内に保管している商品や保管棚の場所を入れ替えることによって、倉庫業務の効率 化に繋がることがあります。作業時間の短縮、商品破損リスクの低減などの効果が期待で きます。
例えば、出荷頻度の高い商品がピッキングしにくい場所(ネステナーの3段目、梱包作業場から遠いなど)に置かれている場合は、それらをピッキングしやすい場所に移すことによってその作業が効率化されます。
倉庫レイアウトの見直しは、初期投資がほとんど不要なので比較的取り掛かりやすい取り組みです。売れ行きの良い商品の直近出荷頻度を調べたり、現場作業員の方の声を聞いたりするなど、まずは気軽に検討してみても良いでしょう。
ただし、在庫ロケーションの変更作業やレイアウト検討などに時間を要すため、一時的に担当者の負担が増加します。また、折角時間をかけてレイアウトを変更しても期待通りの効果が得られず、結果として無駄骨を折ったというケースもあります。スピーディに業務効率化を図りたい場合は、コンサルティング業者に相談してみるのも良いでしょう。
方法4.ピッキング方法の見直し
ピッキング方法の見直しによって、倉庫業務の効率化に繋がることがあります。一般的なピッキング方法として、シングルピッキングとトータルピッキングの2つがあります。
シングルピッキングとは、出荷案件毎に1件ずつピッキングすることで、作業内容がシンプルで1件ずつ確実に作業を進めることができます。一方、トータルピッキングは複数の出荷案件をまとめてピッキングすることで、シングルピッキングに比べてスピーディに作業が進められます。
どちらのピッキング方法もメリットとデメリットがあるので一概に良し悪しは言えません。自らの倉庫業務に適したピッキング方法に切り替えることによって効率化することがあります。WMSの対応状況などにもよりますが、多額の初期投資が不要なため、比較的取り掛かりやすい取り組みです。
方法5.業務フローのマニュアル整備
倉庫業務に限らず、効率化の観点でも業務フローのマニュアル整備は重要です。倉庫レ イアウトやピッキング方法の見直しと同様に比較的取り掛かりやすい取り組みです。マニュアルを整備することのメリットは、以下のようなものが挙げられます。
・作業内容の言語化
⇒担当者や企業が持っているノウハウや情報を残せる
⇒必要な時にいつでも確認できる
・作業内容が共有できる
⇒作業員による内容の認識齟齬を防止できる
⇒業務の属人化を防止できる
・作業教育時間を短縮できる
⇒教育にかける時間の短縮が期待できる
3.なぜマニュアル整備が重要なのか
物流コンサルタントである筆者は、効率化を目指す中で最も大切なのはマニュアル整備であると考えています。業務手順書でもSOP(標準業務手順書:Standard Operating Proceduresの略)でも問題なく、業務フローを正確に言語化できているかどうかが大切なポイントになります。
業務効率化は、「今」よりも効率よく業務を遂行するために取り組むことを指します。まずは「今」どのような状況にあり、どのような課題を抱えているのか、業務関係者が正確に現状を認識する必要があります。マニュアルが整備されていない場合、マニュアルを整備することによって「今」の業務を正確に認識する機会となり、かつ業務フローの言語化によって客観的に「今」の業務を認識できるようにもなります。担当者が異動で配置転換されたばかりであったり、現場作業員が独自のやり方で業務遂行していたりなど、実際の作業内容を正確に認識できていないケースが多々あります。
筆者は、業務効率化を目指すにあたり、最も大切なのはマニュアル整備であり、コンサルティングをする際は第一にマニュアルの整備を検討して欲しいとクライアントへ伝えています。通常業務で手一杯でありマニュアル整備まで手が回らない場合には、物流コンサルタントがマニュアル作成を支援することもできるので、是非一度コンサルタントに相談してみましょう。
4.余談:筆者の経験談
筆者の経験談になりますが、マニュアル整備が最も重要であると認識した大きなきっかけがあります。当時在籍していた倉庫会社で異動になった時の話です。
2019年夏、社内異動でセンター長と呼ばれる倉庫業務管理者に着任することになりました。前任者から業務の引き継ぎを受けている中、着任2日目にして前任者の方が急病で倒れてしまい、長期間入院のため十分な業務の引き継ぎを受けられない状況になりました。当然のことながら、この先問題なくセンター長という業務を遂行できるのかと非常に不安な気持ちになりました。
その中で頼りになったのは、前任者によって完璧に整備されていた業務手順書でした。 とても明確に、かつ細かく書かれた文章に加えて、イラストや写真も含まれていたため、着任直後の私でも容易に業務手順をイメージできる非常にわかりやすい内容でした。私は業務手順書を熟読し、周囲のサポートを受けながら、荷主企業に特段大きな迷惑をかけることなく無事にその状況を乗り越えられました。もし業務手順書が全く整備されていなければ、私はきっと多くのトラブルを発生させていたことでしょう。
この出来事で、マニュアル整備がどれだけ大切であるのか、マニュアル整備は自分だけではなく他人のためにもなる、この2点を知りました。私も前任者に倣って、業務内容の変更等があれば業務手順書を随時更新したり、新たな業務が発生した時には追加で業務手順書を整備したりするようになりました。
さらに業務に慣れてきた頃には、業務手順書の内容について社内の先輩に相談したり、他案件の業務手順書を参考として見せてもらったりなどして、現状フローの改善にも取り組めるようになりました。
「倉庫現場では実際にどのような作業を行っているのか」、「荷主企業はどのような作業を希望しているのか」など、業務内容を正しく理解する必要があります。業務手順書の整備は決して容易ではないと思いますが、倉庫業務の効率化という観点から、それは決して無駄な作業にはならないと筆者は考えます。
5.まとめ
今回は倉庫業務の効率化について取り上げました。倉庫業務フローを改善する方法は様々なものがありますが、取り組みやすいものとして、筆者はマニュアルの整備をおすすめしています。倉庫業務の効率化についてお悩みの場合は、コンサルタントに相談してみるのも良いでしょう。
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