第22回 これからの発展が期待されるマイクロフルフィルメントセンター(MFC)

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第22回 これからの発展が期待されるマイクロフルフィルメントセンター(MFC)

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第22回 これからの発展が期待されるマイクロフルフィルメントセンター(MFC)

公開 :2025.06.30 更新 : 2025.06.30

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EC市場の好況を背景に、日本各地でFC(フルフィルメントセンター:Fulfillment Center)の開設が相次いでいます。FCとは、ECや通販に特化し、最先端のシステムや設備が導入され高度に自動化された物流センターです。

その中でも最近、話題になっているのがMFC(マイクロフルフィルメントセンター)です。FCは、商品の入荷から出荷までの工程をロボットや最新のマテハン機器によって自動化・効率化します。
さらに受注から発送、返品処理や顧客管理などバックオフィスの業務を担う点が、従来の倉庫とは一線を画しています。本コラムでは、効率性と顧客満足度を最大化するマイクロフルフィルメントセンター(MFC)についてお伝えします。

1.MFCとは

マイクロフルフィルメントセンター(Micro Fulfilment Center:MFC(以下MFC))とは、ECの受注から配送に至る処理を効率化するため、顧客に近い土地に設置された小規模物流拠点です。フルフィルメントセンターと呼ばれる従来の大型物流センターが都市圏の郊外にあるのに対し、MFCは都市部の比較的狭い敷地や小売店舗内に併設されています。

また、その敷地面積も約465㎡(約140坪)程度〜約930㎡(約280坪)程度とコンパクトです。MFCの目的は「都市部の立地を活かし、受注から出荷までのプロセスを小型化・効率化することで、ラストワンマイルにおける迅速な配送を実現すること」にあります。

MFCが登場した背景には、EC市場の急成長と「翌日配送」や「当日配送」など、スピーディーな納品を望む消費者ニーズの高まりがあります。AmazonなどのEC大手では「翌日配送」が標準となり、商品者の意識も大きく変化しました。
「ECで発注したものはすぐに届くもの」という認識が高まったため、MFCは消費者に近い都市部に商品在庫を配置し、注文、在庫管理、梱包、発送などの一連のプロセスを効率的に行うようになりました。ラストワンマイルにおける配送距離を短縮しスピーディーな配送を実現することで、顧客の期待に応えられるようになったのです。

参考:物流視察ドットコム「物流革命!〜マイクロ・フルフィルメント・センター〜」
https://www.ryutsu-shisatsu.com/column/200914-369

2.海外におけるMFC発展の歴史

MFCの概念は2010年代の米国で誕生しました。かつての米国では、オンラインで発注した商品が手元に届くまで1週間以上かかるのが普通でした。しかし、2005年にAmazonがプライムメンバーに対して無料の2日間配送を開始して以来、商品配送のスピード競争が始まりました。

まず、2013年にALERT INNOVATION社がグロサリー店舗のMFCを開発し、ウォルマート社に導入しました。当時の最小スペースは約740㎡(約224坪)で、6分間に50品目の処理能力がありました。

2016年にはマサチューセッツ州のTakeoff社がグロサリー店舗のMFCを開発し、アルバートソンズ、ロブロウなどの企業で採用されました。こちらの最小スペースは約465㎡(約140坪)と小型化し、5分間に60品目の処理ができました。2013年にALERT INNOVATION社がはじめたMFCより小型化し、処理スピードもアップしています。

2018年にはドイツのフランクフルトに本拠地があるDEMATIC社が小売店舗全般向けのMFCを開発し、Amazonに導入しました。配送スピード競争の激化に加え、生鮮食料品を含めたグロサリー配送の需要が高まり、1~2時間以内の配送といった顧客ニーズに対して従来の店舗では対応が不可能となったためです。

さらに2020年のコロナ禍によってEC利用が急増し、これに対応するためにMFCの普及が加速しました。現在、北米中心では1,000拠点以上のMFCが稼働しており、市場調査によれば2030年までに世界で5,600拠点以上のMFC設置が見込まれています。

3.MFCの立地と機能

MFCの立地において最重要視されるのは「ラストマイルにおける顧客への近さ」です。そのため、人口密度の高い都市部が理想的であり、MFCから半径2〜5kmの配送エリアをカバーできる立地が望まれます。郊外に展開される大型のフルフィルメントセンターの立地とは大きく異なり、MFCは都市部の地下スペース、商業施設の未使用バックヤード、鉄道高架下などの活用がポイントになります。不動産価値は低くても、配送効率の観点から価値の高い立地が選択されます。

MFCは小型でありながら、商品の入荷から保管、ピッキング、梱包、出荷に至る一連のプロセスを担う高機能な物流拠点です。多くのMFCでは、回転率が高い商品を中心に2,000〜8,000点のSKU(最小在庫管理単位)を取り扱います。

また、MFCでは迅速な出荷が求められるため、自動化が進んでおり、限られたスペースを有効に活用するため垂直方向の空間を最大限活用した保管システムを導入しています。

例えば、SKUごとの専用コンテナに商品を格納し、高密度な保管スペースによって保管効率を最大化するオートストアなどの自動倉庫型ピッキングシステムを導入しているMFCもあります。こうした「モジュール型」の設備は、初期投資やランニングコストを抑えながら需要に応じて段階的に拡大、縮小できる点が優れています。

MFCでは、先述のようなキューブストレージシステム、シャトルベースシステム(シャトル(電動台車)がレールの上を走行し、棚に保管された商品を搬送するシステム)やAMR(自律型移動ロボット)ベースシステムの3種類が主流となっています。

4.MFCの種類

MFCには「店舗併設型」と「独立型」の2つの形態があります。店舗併設型は既存の小売店舗のバックヤードや売り場の一部を改装して活用する形態です。店舗と在庫を共有でき、店舗施設の一部を利用できる点がメリットです。

一方「独立型」は「ダークストア型」とも呼ばれ、顧客が入店できない独立した小型物流拠点です。オンラインストアに特化しており、ピッキング効率や迅速な出荷対応などオペレーション効率を最優先した設計となっています。

また、顧客が訪れることがないためリアルの集客に縛られず、自由度が高い点も特長です。

例えば、フードデリバリー企業などが運営するダークストアは100㎡(約30坪)未満の施設でも効率的な運営とスピーディーな配送を実現しています。

MFCには「迅速性」「効率性」「柔軟性」の3つの要素が求められます。

顧客に近い立地あることで、翌日配送や当日配送など「迅速な配送」が可能になります。

さらに自動化技術による生産性向上で「効率性」を実現します。自動化による人件費削減や、長距離輸送が減ることによる輸送コストの削減が可能です。

また、小規模だからこそ市場環境や消費者ニーズの変化に迅速に適応できる点や、省スペースでも高密度の保管が実現できるキューブストレージシステムの活用などで「柔軟性」を実現します。

5.日本におけるMFCと今後の展望

日本ではMFCはまだまだ普及しておらず導入初期段階ですが、EC市場の拡大とラストワンマイルの課題を背景に成長が期待されています。

MFCの大きな課題は都市部における高額な地価と物流用不動産の不足です。特に東京ではMFCを設置する場所の確保が難しいため解決策として、商業施設の空きスペース活用や閉店小売店舗のコンバージョンなど、創造的な不動産活用が模索されています。

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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