第13回 物流拠点の自動化とロボット利用における課題

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第13回 物流拠点の自動化とロボット利用における課題

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第13回 物流拠点の自動化とロボット利用における課題

公開 :2024.03.26 更新 : 2024.03.26

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物流の2024年問題が目前に迫っています。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が960時間に規制され、加えて改正改善基準告示(*1)が適用されることで、労働時間が短くなります。長時間に及ぶトラックドライバーの労働時間の改善が期待される一方で、稼働時間の減少による輸送能力の不足が懸念されています。
世間では物流の2024年問題に対する認知は進みましたが、課題解決に向けての取り組みは引き続き必要な状況です。この記事では2024年問題の観点から物流拠点における自動化や物流ロボットの利用による課題解決についてお伝えします。

(*1)改正改善基準告示:厚生労働省が定めたトラック、バス、ハイヤー、タクシー等の自動車運転者について労働時間等の労働条件の向上を図るための「拘束時間の上限、休息期間についての基準」等

参考:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト「改善基準告示とは?」https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice

2024年問題の現状と省人化・自動化の課題

トラックドライバーの長時間労働は何に起因しているのでしょうか。
内閣府のホームページ「『2024年問題』への対応に向けた動き」によると、その要因のひとつとして、荷主の積卸し場所での荷待ち時間が上げられています。
トラック1運行あたりにかかる荷待ち時間の平均は1時間34分となっており、2時間を超える荷待ち時間は17.7%となっています。この荷待ち時間は荷卸しを行うための待機時間や、出荷する貨物を積載するまでの待機時間が対象です。可視化は困難ですが、早めに現地に到着して倉庫の構内や近辺で待機することも含まれます。

参考:内閣府 ホームページ 「2024年問題」への対応に向けた動き
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2210_01startup/230406/startup10_0203_03.pdf

トラックドライバーの長時間労働起因「荷待ち時間」

一方、2024年問題への対応の実態はどうでしょうか。
公益財団法人 日本ロジスティクスシステム協会は「物流変革の波:2024年問題対応に向けた実態調査」を実施し2023年12月01日に調査結果を発表しました。この調査結果で具体的な課題が浮き彫りになりました。

先述のトラックドライバーの荷待ち時間の主な発生要因として、全業種で最も多く選択された項目は「荷造り作業の遅れ」でした。この調査ではトラックドライバーの負担になっている業務についても指摘されています。
例えば、荷造りや仕分け、検収・検品、はい作業といった附帯業務が負担となっていることや、ドライバーの負荷を軽減するパレットの活用拡大や外装標準化といった取り組みが進んでいないことなどです。こうした業務はドライバーの負担となるため、長時間労働の要因のひとつになっています。

参考:公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会「物流変革の波:2024年問題対応に向けた実態調査」
https://www1.logistics.or.jp/news/detail.html?itemid=1039&dispmid=703

自動化・省人化による効率化と労働時間削減

トラックドライバーの荷待ち時間削減や作業負荷軽減をするためには、物流拠点での作業効率化や自動化の取り組みが必要です。貨物や商品が捌ききれずに滞留すると、その工程がボトルネックとなり前後の工程に影響を及ぼし物流全体の工程が円滑に進みません。
例えば、大量の貨物が物流拠点に到着した場合、入庫検品や仕分け処理が追いつかず、次に到着したトラックの荷卸しができないという問題が発生します。また、後工程では出荷すべき貨物が準備できていない場合に荷待ち時間が発生します。

昨今、EC市場の拡大に伴って、TC(Transfer Center :通過型センター)が増加しています。TCに入荷した商品は迅速に仕分けした後に出荷されますが、仕分け工程で商品が滞留すると、次に到着したトラックは荷卸しができず、待ち時間が発生します。

物流拠点内のオペレーションが属人的な場合も処理能力に制約が生じます。ピーク時には臨時のスタッフを派遣したり、バックオフィスの社員に応援を依頼したりして対応する方法もありますが、それらの場合は作業品質の維持や残業時間の増加が課題になります。複雑なオペレーションの対応や慣れない業務で発生しがちなヒューマンエラーの予防も必要です。

課題解決と省人化・自動化を実現するマテハンとロボット

上述の課題を解決する策として、マテハンやロボットの導入があります。こうした機器は自動化・省人化を実現し、生産性の向上を図る強力なツールになります。例えばTCにおけるトラックドライバーの待ち時間を減らすためには、仕分け工程の自動化が考えられます。具体的にはDAS(デジタルアソートシステム)と呼ばれる作業の効率化を支援するシステムやGAS(ゲートアソートシステム)と呼ばれる仕分け先の投入間口が自動的に開閉するマテハン、自走型のロボットソーターの導入などがあります。

一方、倉庫全体の自動化や省人化においては、自動倉庫やコンベア、ソーターなどの大規模かつ固定的な設備や、フレキシブルで自律的に走行するAMR(自律搬送ロボット)やGTP(Goods To Person:貨物をピッキングする作業者の元や保管棚するまで商品を運ぶ)タイプのロボットの導入があります。WMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)と連携した自動化機器が倉庫オペレーションの効率化と生産性向上に貢献します。

物流業界では、季節性のイベント、新型コロナウィルス禍や国際紛争など社会情勢の変化に起因する物流波動が発生します。さらにビジネスの事業環境が変化する可能性もあります。マテハンやロボットの導入時には、外部環境の変化や商品種類やSKU(Stock Keeping Unit:在庫管理を行うときの最小の管理単位)の変化に応じて、柔軟に対応できるシステムの構築や機器の選択が必要です。物流拠点の保管スペースやピッキングエリアの最適な動線設計についても考慮する必要があります。

省人化・自動化を実現するマテハンとロボット

設備導入前の検証を行い、リスクを可視化するデジタルツイン

機器の導入に際して考慮すべきポイントがあります。それは導入したマテハンやロボットが「期待通りの効果を発揮してくれるのか」といった点や、検討時に最適化されていた設計が導入後に陳腐化してしまわないか、物流量の増加に対して拡張性があるかといった点です。

こうした点に対しては、事前のシミュレーションやPoC(Proof of Concept:実現の効果や効用を技術的な観点から検証する行程)が必要です。新規設備の導入を検討・検証する際に、費用の問題や、既に導入済みの設備の事情、日々のオペレーションを中断できないなどの理由で、リアルな環境で検証できないことがあります。

このような場合、課題解決の1つとしてデジタルツインがあります。デジタルツインとは現実と同じ環境をデジタルの仮想空間に再現する技術です。現実世界から収集したさまざまなデータをコンピュータ上で再現できるため、設備導入前の検証をより高精度に実施できます。事前のリスクアセスメントや結果的に無駄となる投資を回避することにもつながります。

「物流拠点の自動化とロボット利用における課題」のまとめ

物流の2024年問題の課題を解決するためには、輸送会社やトラックドライバーの努力だけではなく、倉庫など物流拠点の業務効率化も大切な要素の1つです。
マテハンやロボットは自動化や省人化を担う強力なツールですが、導入効果の恩恵を受けるためにはスピーディーかつ的確な判断が必要です。デジタルツインはこうしたツール導入時のリスクの可視化やオペレーションの最適化に寄与します。

鈴与シンワートは物流コンサルティングサービスを提供しています。
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課題に合わせ、デジタルツインを活用した物流ITコンサルティングの提案も可能です。お気軽にお問い合わせください。
https://www2.shinwart.co.jp/l/907272/2021-11-28/39gg2

著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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