2026年4月から、一定規模以上の特定事業者においてCLO(Chief Logistics Officer:物流統括管理者)の選任が義務化されます。経営幹部が物流部門を統括することによって、中長期的な視点による物流部門の運営や、ステークホルダーの枠を越えた組織横断的なサプライチェーンの全体最適が求められるようになります。
CLOを選任することで、物流部門の重要性が社内外に一層認識されます。また、企業内外のいずれにおいても、これまでの物流に対する見方について潮目が変わるタイミングです。
本コラムではCLOの選任に関する動向(2025年12月現在)についてお伝えします。
1. CLOの選任が義務付けられる特定事業者とは
はじめに、CLOの選任について説明します。CLOの選任が求められるのは一定規模以上の特定事業者であり、以下の4つに分類されます。特定事業者とは、指定された基準以上の貨物の取り扱いや規模を有する事業者を指します。(※1)
1.特定荷主:取扱貨物の重量9万トン以上 2.特定連鎖化事業者:取扱貨物の重量9万トン以上 3.特定貨物自動車運送事業者:保有車両台数150台以上 4.特定倉庫業者:貨物の保管量 70万トン以上 |
なお、2.の「特定連鎖化事業者」とは、主にフランチャイズ(FC)本部の事業者のことで、コンビニエンスストア等を営む企業が該当します。
さらに、CLOの選任が義務付けられるのは先述の4つの特定事業者のうち、以下の2つの特定事業者です。
1.特定荷主:取扱貨物の重量9万トン以上
2.特定連鎖化事業者:取扱貨物の重量9万トン以上
CLOの選任が義務付けられた特定事業者は、役員等の経営幹部からCLOを選任し、届出を行う必要があります。届出のスケジュールは、特定事業者の届出が2026年5月末まで、CLOの選任の届出が2026年10月末までです。
届出先については、荷主・連鎖化事業者はそれぞれの事業を所管する大臣、物流事業者は国土交通大臣となっています。具体的な提出先、提出方法等については、2026年施行の法律のため、別途定められる予定です。
なお、特定荷主及び特定連鎖化事業者が、CLO選任の届出義務を怠った場合は行政処分があり、20万円以下の過料が科せられます。また、選任をしなかった場合は百万円以下の罰金が科せられますので、期日までに対応することが必要です。(※2)
届出に関わる具体的な内容については、「物流効率化法 理解促進ポータルサイト」をご確認ください。
【出典】
(※1):国土交通省、経済産業省、農林水産省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト 『特定事業者の指定について』
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/designation
(※2):国土交通省、経済産業省、農林水産省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト 『物流統括管理者(CLO)の選任』
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo
2. まだまだ認知度が低いCLOの選任について
2026年4月に義務化されるCLOの設置ですが、その認知は未だ道半ばです。物流コンサルティングファームの船井総研ロジ株式会社(以下、船井総研ロジ)が、2025年8月〜9月にかけて実施した「CLO(物流統括管理者)選任状況に関するアンケート調査」では、CLO選任に対する認知や理解の不足、遅れが指摘されています。(※3)
本アンケート調査では、総回答数のうち、特定荷主においてCLOが「すでに任命されている」が15%、「今後任命される可能性がある」が28%となっています。一方で、42%が「任命されることはない」と回答しており、特定荷主でありながらも、特定荷主としての理解・認知が不足している可能性が指摘されています。その一方で、特定荷主ではない荷主(非特定荷主)においては、CLO 選任対象外であっても、5%の企業が「今後任命される可能性がある」と回答しています。 非特定荷主であっても、CLO に対する関心を寄せていることが示されています。
船井総研ロジによる本アンケート調査は、「荷主企業物流部門責任者向けに開催した CLO セミナー」参加者162名のうち、回答総数は118社となっています。国土交通省では、CLO選任義務がある事業者は約3,200社と見込んでいるため、本アンケート調査の回答数から全体を推し量ることは難しいですが、CLOに対する認知状況の参考になるのではないでしょうか。
【出典】
(※3):PR TIMES 株式会社船井総研サプライチェーンコンサルティング 『特定荷主の 4 割が「CLO 選任の予定なし」、認知・理解不足の可能性~非特定荷主の 5%が選任を検討、法対応外でも関心がうかがえる~』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001153.000059144.html
3. 持続的な物流に不可欠なCLOの役割
少子高齢化が加速し、物流の担い手不足の課題に直面する日本において、CLOは極めて重要な役割を果たします。国土交通省は、CLOの役割について、企業の物流全体を経営的視点で統括し、物流効率化法に基づき「中長期計画」を策定・実行することで、ドライバー不足やCO2削減などの課題解決に貢献することと述べています。 (※4)
これまでの企業の物流の最適化は、企業単位で物流をコストとみなすコストドリブンの視点から進められてきました。しかし、担い手不足が加速し、経済のインフラ維持に黄色信号が灯る現在、企業の枠組みを越えたサプライチェーンの全体最適の構築が不可欠です。
このような状況下で、経営幹部からのCLO選任は、経営視点から利害が相反する社内部署の連携・調整や、社外の取引先やステークホルダーとの水平連携や垂直連携を推進するものとして期待されています。
【参考】
(※4):国土交通省、経済産業省、農林水産省 「物流効率化法」理解促進ポータルサイト 『物流統括管理者(CLO)の選任』
https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/clo
4. 我が国のサプライチェーンの最適化に向けて進む取り組み

CLOの選任は、全体最適を進める観点から必要な施策です。その他にも、我が国では、物流課題の解決に向けてさまざまな取り組みが進んでいます。
例えば、フィジカルインターネットは、物流の2024年問題への対策として注目されている次世代物流システムです。IoTやAIなどのデジタル技術を活用し、荷物をデータパケットのように扱い、複数の企業が物流リソースを共有して効率的に輸送しようという考え方です。経済産業省と国土交通省は、2021年10月にフィジカルインターネット実現会議を設置し、2022年3月に2040年までのロードマップを策定しました。現在、ダブル連結トラックの導入、共同配送やパレットなど資材の標準化といった取り組みが進んでいます。
また、先述のロードマップに基づき、企業の枠を越える取り組みとして業界別にワーキンググループ(WG)が設置され、2030年に向けたアクションプランが策定されています。2023年7月には化学品WGが新たに設置され、物流の商慣行改革や標準化、DX推進に取り組んでいます。これらのWGでは、コード体系標準化や物流資材の標準化などの議論が優先的に進められています。こうした取り組みにおいてもCLOは極めて重要な役割を果たします。
また、2024年11月1日、政府はこれまでの「トラックGメン」を「トラック・物流Gメン」に改組しました。トラックGメンは「物流の2024年問題」の解決を目指し、トラック事業者への負担(長時間の荷待ち、契約外作業の強制、不当な運賃・料金の引き下げなど)の是正や指導をしてきました。一方、「トラック・物流Gメン」は、物流業界全体の取引適正化を進めるために、それまでの役割が拡大され、倉庫事業者からも情報収集や意見聴取をしています。
「トラック・物流Gメン」は、荷主と倉庫業者間の取引適正化の課題に対して、荷主等に対する実行的な対策を推進することが目的です。政府のこうした取り組みは、CLOがその役割を果たす上でも間接的な力となるのではないでしょうか。
【参考】
経済産業省『フィジカルインターネットの実現に向けた取組について』 https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/content/001628774.pdf
国土交通省 『トラック・物流Gメンの取組』 https://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/ryutsu/data/250610_setsumeikai_mlit2.pdf
5. 特定事業者におけるCLOの選任についてのまとめ
CLOの選任は、我が国のサプライチェーンの長期的な維持継続と全体最適を図る観点から、重要なステップです。特に、CLOの選任が義務付けられている特定荷主や特定連鎖化事業者(いずれも取扱貨物の重量9万トン以上)については、早急な取り組みが求められます。
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