巷間でも大きな話題となった物流の2024年問題。さまざまな取り組みがなされながらも、依然として課題が山積しています。国土交通省では、2030年に必要な輸送能力の約34%(9億トン相当)(※1)が不足し、さらに深刻化するとみて対策を継続しています。
荷主への価格転嫁や取引適正化などをはじめとした「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定し、物流分野の省力化投資の促進や物流DXが推進されています。本コラムでは運送事業の安全確保を担う「運行管理」のDXについて説明します。
(※1)引用:国土交通省 『物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題』
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001888325.pdf
目次
1.運行管理と運行管理制度とは
経済を支えるインフラの運送事業において、安全な輸送の確保は不可欠です。運行管理とはトラックやバスなどの事業用自動車を安全かつ効率的に運行させるための業務であり、その中核となるのが「運行管理制度」です。輸送を担う自動車運送事業者には、事業用自動車の運行の安全を確保するため、国家資格者である運行管理者を一定人数以上選任することが法的に義務付けられています。運行管理者は運行管理者試験の合格者や、5年以上の実務経験かつ所定の講習を5回以上受講し、必要な要件を備えた者に対して資格者証が交付されます。
運送事業者は運行管理制度に基づき、営業所ごとに保有車両数に応じて運行管理者を選任しなければなりません。トラック運送事業では保有車両29両まで1名・以降30両ごとの配置基準が設けられています。また、職務遂行に必要な知識や能力の向上を図るため、2年に1度、定期的な一般講習が義務付けられています。運行管理者の役割は大きく以下の3つに大別されます。
1つ目が運転者の勤務時間等の適正な管理です。乗務記録、運行記録計により乗務時間を把握し、適切な勤務体制の確立を図ります。
2つ目が点呼による運転者の健康状態等の把握等です。乗務前後の点呼により健康状態や飲酒の有無、運転者の疲労などを確認し、悪天候の際には運行経路を変更するなど、安全な運行を確保するために具体的な指示を行います。
3つ目が運転者に対する指導監督です。運行の安全を確保するため、運転者に対して日頃から指導監督を行い、安全関係法令等に対する遵守の徹底を図ります。
(※1)参考:国土交通省『運行管理制度について』
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090405/07.pdf
国土交通省『運行管理者について』
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/dispatcher.html
全日本トラック協会『[運行管理業務と安全] マニュアル』
https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/anzen/unkou_kanrigyomu_anzen_manual(1).pdf
2.運行管理における課題とは
安全な運送事業を継続するために不可欠な運行管理制度ですが、一方でさまざまな課題が生じています。具体的には以下のような課題が挙げられています。
1. 安全マネジメント体制の課題
安全対策を運行管理者任せとする、経営トップの関与不足の課題です。安全対策の水準は経営トップの安全意識に大きく左右されますが、企業全体での安全確保体制が弱体化していることがあります。
2. 運行管理者に関する課題
運行管理者の指導・監督のレベルにばらつきがあることがあり、一定水準以上まで、向上し、維持する必要があります。また、運行管理者が一時的に不在の時に業務をサポートするための運行管理者代務者制度では、責任、権限、役割分担等が明確にされていないため、酒気帯び運転などが発生する可能性があります。
3. 乗務前後の点呼、疾病や疲労の確認、飲酒防止対策の課題
事故につながりかねない健康状態や疲労、酒気帯びの確認体制が不充分なことがあります。乗務員からの報告や顔色等からの判断だけではなく、デジタル機器を活用した確実な確認や定量的な判断が求められています。
4. IT活用の課題
過労防止の観点などから、現在対象外とされている自動車についても義務付けの拡大が検討されています。また、ドライブレコーダーや車両管理システムなどのIT機器の普及が十分に進んでおらず、運行管理面のデジタル化が遅れているケースがあります。
参考:国土交通省『事業用自動車に係る総合的安全対策の課題及びそれに対する具体的な対応』
https://www.mlit.go.jp/common/000031876.pdf
国土交通省『これまでの安全対策における課題等(例示)』
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090405/10.pdf
国土交通省『現行の運行管理制度の課題及びそれに対する具体的な対処内容』
https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090616/01s.pdf
3.運行管理の課題解決の取り組みとDX
先述の課題に対してさまざまな課題解決の取り組みが進んでいます。運行管理の課題解決の取り組みについて、国土交通省と運送事業者の両面から記載します。
国土交通省での運行管理の課題解決の取り組み
国土交通省では「ICTを活用した運行管理の効率化などにより、運転以外の業務も効率化していく」(※2)ことを政府行動計画に明記し、事業用自動車総合安全プラン2025では「ICTを活用した高度な運行管理の実現」を重点施策として推進しています。具体的には、従来の対面点呼から、カメラやモニター等を介した遠隔点呼や、点呼支援機器による自動点呼の導入により、運転者・運行管理者の長時間労働是正や人的ミス減少による確実性向上 を目指しています。
運送事業者側の運行管理の課題解決の取り組み
運送事業者側では、ロボットによる点呼の自動化によって、運行管理者の負担軽減や点呼の精度向上を図ります。また、測定機器による酒気帯びの確認やカメラ映像やAIとの組み合わせによって、体温や脈拍、睡眠状態やストレス状態等の健康状態の把握が可能となります。
また、乗務日報の自動作成システムや、運行管理支援システム、配車アプリ、GPS端末による車両の動態管理システムの導入によって運行管理の業務負荷を低減する取り組みが行われています。さらにトラック運送業では、ドライバーの荷待ち・荷役時間の削減が求められているため、配車計画システム、バース予約受付システムなどの導入によって、ドライバーの荷待ち・荷役時間の削減 を図り、ドライバー不足に対する課題解決が進められています。
(※2)引用国土交通省『運送事業者の運行管理の高度化について』
https://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/gian/hoan/seminar2021/yasuhara.pdf
参考:国土交通省『物流・配送会社のための物流DX導入事例集』
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001609016.pdf
4.運行管理のDXについてのまとめ
運送事業のさまざまな課題解決の取り組みが進められるなか、安全確保の中核である「運行管理」において、DX化は不可欠と考えられます。
鈴与シンワートでは運行管理のDX導入のサポートに取り組んでいます。
運行管理をDXで課題解決した事例を1つご紹介しましょう。
バルク車・ウイング車など約50台の特殊車両を保有する鈴与シンワ物流株式会社では、車載機のサポート終了に伴うリプレースと以下の5つの課題解決のために、運行管理システムの検討が必要でした。
・ベテラン運転手の豊富なノウハウをデータとして蓄積することと業務改善への活用
・新システム導入によるITリテラシー向上とDX対応人材の育成
・事故等の緊急時に、本社や事業所の担当者がリアルタイムで管理できる安全管理体制の構築
・最適ルート選択のためのデータ蓄積と業務効率化
・高速料金や燃料費のデータ化による情報基盤の整備と効率的な荷主への改善提案
運行管理システムは各社から多種多様な製品が提供されているため、自社に最適な製品の選定に悩むことがあります。鈴与シンワートでは定量的な製品の比較分析やコスト分析を行い、選定ポイントを可視化することで迅速な意思決定に寄与しました。投資コストが限られる中小の運送事業者においては、無駄な投資を回避し、最適な課題解決につながります。
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