第10回 物流業界で活用が期待されるデジタルツイン

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第10回 物流業界で活用が期待されるデジタルツイン

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第10回 物流業界で活用が期待されるデジタルツイン

公開 :2023.11.10 更新 : 2024.10.23

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現実世界の様々な要素を仮想空間に再現するデジタルツイン。現実世界では不可能なことでもデジタル技術を活用することで実現できます。様々な業界においてデジタルツインの活用例が増えています。このコラムではデジタルツインについて説明します。

デジタルツインとは何か?

そもそもデジタルツイン(Digital Twin)とは何でしょうか。ツイン (Twin)とは双子を意味する単語です。デジタルツインとはデジタルの双子のことで、現実の世界をデジタル上であたかも双子の様に再現する技術です。現実空間にある物体や現象をデジタル空間でシミュレートする技術がデジタルツインです。デジタルツインは現実空間とデジタル空間、そして両者をつなぐ情報連携の3つの要素で構成されています。

デジタルツインについて解説

現実世界では、実際に進行している工程やタスクを途中で止めたり介入したりすることは多くの場合、困難です。前後の工程や周囲との関連、対象の空間や物質の特性から現実的に行えないことも、デジタルツインではデジタル技術を使ってシミュレーションを行うことが可能です。また、シミュレーションから導き出した結果を現実の世界にフィードバックすることで、問題や異常を予測し、事前にトラブルを回避することができます。

デジタルツインは製造、交通、医療、建設など様々な分野で活用されています。例えば、医療分野では、仮想空間で手術をシミュレーションすることができるシステムがあります。本物の人体で手術のシミュレーションやトレーニングをすることは困難ですが、デジタルの世界では何度でも可能です。また、シミュレーションやトレーニングの結果をデジタルデータで可視化し記録することも可能です。

デジタルツインで利用される技術

デジタルツインに使われる技術は様々なものがあります。例えば、物理空間を拡張する技術であるAR(Augmented Reality:アグメンティッド・リアリティ)や仮想空間を現実世界のように再現できるVR(Virtual Reality)はデジタルツインには欠かせない技術です。ここではデジタルツインで利用される技術について説明します。

1.IoT

IoTとはInternet of Thingsの略であり、モノがインターネットと接続して通信する機能を持つことを指します。製品や製造設備などが搭載したセンサーやカメラを経由してさまざまなデータを収集し、仮想空間に送信します。

2.AI

AIとはArtificial Intelligenceの略であり、人工知能を意味します。デジタルツインでのAIの役割は機械言語や深層学習によって膨大なデータを効率的に分析・予測することです。

3.AR

ARとはAugmented Realityの略であり、現実世界にデジタル情報を付加する技術です。デジタルツインで生成された3Dデータを現実のようにリアルに見せることができます。例えばARグラスは現実世界に3Dデータを重ねて映すことができます。

4.VR

VRとはVirtual Realityの略であり、仮想現実を意味します。VRはコンピュータによって作り出された仮想的な空間で様々なことをまるで現実のように体験することができます。

5.5G

5G(第5世代移動通信システム)とは、 4G(第4世代移動通信システム)を高速かつ大容量化し、それに加えて低遅延、多数接続が可能と言った特長を持つモバイル通信システムです。デジタルツインにおいて、5Gは現実空間と仮想空間を繋ぐ通信手段として期待されています。

デジタルツインでできること

デジタルツインでは何ができるのか 

デジタルツインで行うことができる機能について説明していきます。

1.監視と分析

デジタルツインは、対象物をリアルタイムで監視・分析することができます。これにより、問題や異常を早期に検出し、迅速に対処することが可能です。

2.予測とシミュレーション

デジタルツインは将来をシミュレーションし、予測することができます。例えば、製造業では機械の故障を事前に予測し、保守作業の最適化をすることができます。

3.リモートモニタリングと操作

デジタルツインは、遠隔地の監視や操作ができるため、遠隔作業や遠隔保守に活用できます。

4.データの統合と協調

デジタルツインは、異なるデータソースからの情報を一元化し、統合することができます。これにより意思決定のサポートに役立ちます。

5.デザインおよび開発支援

製品や建築物の設計段階でデジタルツインを使用し、設計の最適化や容易に問題を特定できます。

デジタルツインのメリットとデメリット

デジタルツインのメリットは、仮想空間に現実世界を反映させて、品質向上やリスクの低減、オペレーション業務の効率化・最適化をすることができるため、生産性を向上させることが可能です。またアフターサービスの充実や技術の伝承などが可能になります。

一方、デジタルツインのデメリットとして、多額の出費と、構築・導入及び保守・運用に高度な技術力が必要になる点があげられます。

物流分野で活用できるデジタルツイン 

物流分野ではデジタルツインの活用ができる様々な領域があります。物流におけるデジタルツインの主な用途について説明します。

1.貨物追跡と在庫管理

物流業界では、デジタルツインを活用して貨物や在庫をリアルタイムで追跡・管理します。センサーやRFIDを用いて、貨物の位置、状態、温度などをモニタリングし、デジタルツインを通じて情報にアクセスできます。これにより、在庫の正確な把握や効率的なサプライチェーンの管理が可能となります。

2.ロジスティクスの最適化

デジタルツインは、輸送経路や運送スケジュールの最適化に役立ちます。リアルタイムデータをもとに、交通状況、気象条件、在庫状況などを考慮して、輸送プロセスを最適化して遅延を軽減し、コストの削減ができます。

3.予測保守

物流業界では、デジタルツインを使用して車両や機器の保守計画を最適化し、予測保守をします。センサーから得たデータを分析して故障を予測し、事前に保守をすることで、車両の停止時間を最小限に抑え、サービスの信頼性を向上させます。

4.シミュレーションとトレーニング

デジタルツインを使用してトレーニング及びシミュレーションを実施します。トレーニング用のデジタルツインは、運転手や倉庫作業員のスキル向上や危険時の模擬に役立ちます。また、新たな物流プロセスや施設の設計段階でシミュレーションをすることにより、効率的な物流プランの策定に寄与します。

デジタルツインは物流業界において効率の向上、コスト削減、サプライチェーンの最適化やリスク低減などの効果をもたらします。このように、デジタルツインは今後物流分野において非常に重要な役割を担っていくと思われます。

鈴与シンワートでは「鈴与グループが持つ物流ノウハウ」と「鈴与シンワートのシステム開発力」を生かし、物流の課題を解決する最適なソリューションを提案します。
課題に合わせ、デジタルツインを活用した物流ITコンサルティングの提案も可能です。
お気軽にお問い合わせください。

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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