第6回 物流DXとは?デジタルによる課題解決と新たな価値創造

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第6回 物流DXとは?デジタルによる課題解決と新たな価値創造

物流ITコンサルティング

第6回 物流DXとは?デジタルによる課題解決と新たな価値創造

公開 :2023.03.30 更新 : 2025.02.28

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物流DXとは?

物流DXとは、小口配送の増加に伴う人手不足の解消、労働環境の改善、在庫管理効率化、配送ルート最適化、顧客接点の強化をはじめとした、物流の様々な課題に対応するデジタル技術の活用のことなどをさします。

DXのイメージ画像

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは?

そもそもDX(デジタル・トランスフォーメーション)とは何でしょうか。
経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」※1ではDXを次の様に定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
※1 経済産業省 「デジタルガバナンス・コード2.0」

DXのゴールはデジタル技術を活用した経営革新であり、個別業務や個別課題の単純なデジタル化だけではありません。属人的でアナログの業務をデジタル化することが、DXの目的ではなく、最終的にはデジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を目指します。そのゴールを実現するためにはデジタル技術の活用という手段を目的としないことが重要です。

DXの3つのステップ

DXは以下の3層構造になっています。

1. デジタイゼーション(Digitization)

アナログデータや物理媒体のデータをデジタルデータ化することです。例えば紙の帳票をデジタル化することで、転記作業の負荷軽減を図る、デジタルデータを部門間で共有し、業務効率を向上することなどがあげられます。

2. デジタライゼーション(Digitalization)

個別の業務やプロセスのデジタル化や、デジタル技術を用いて製品やサービスの付加価値を高めることです。クラウドサービスの活用により、業務効率の改善や省力化による顧客サービスの向上を目指すこともデジタライゼーションの一例です。

3. デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)

デジタル技術を用いた事業やビジネスモデルの変革で目指すべきゴールのことです。
デジタルトランスフォーメーションは、顧客視点での価値創造や企業価値向上の実現を目指します。

物流分野におけるDX

物流分野でDX化が可能な業務は以下の6大基本機能です。各々の機能をDX化することで課題解決と価値創造の実現ができます。

  1. 輸配送(トラックや鉄道、船舶や航空機を利用した物流拠点間の輸送、小売りや顧客への配送)
  2. 保管(倉庫や物流センターでの貨物の保管)
  3. 荷役(倉庫や物流センター内の作業、貨物の積み下ろし、入出庫、ピッキング作業など)
  4. 流通加工(ラベル貼付や検品、値札つけなど)
  5. 包装(物流容器、ダンボール、パレット、コンテナなど)
  6. 情報管理(IoT、ロジスティクスDXなど)

物流におけるDXの活用とは?

物流領域でDXはどの様に活用されるのでしょうか。
国土交通省は物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」※2と定義しています。
具体的には「既存のオペレーション改善・働き方改革を実現」「物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新」すると記載があります。

物流業界は属人的で労働集約型の印象が強い業界です。日本国内の輸送会社でITへ潤沢なコスト投資ができる企業は限られています。物流業界の多くを占める中小企業には、十分なIT投資もままならず、デジタル化されていない非効率的業務が数多く存在し、効率化の阻害要因になっています。

※2 国土交通省:総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)

物流業界が抱える課題

物流業界のDX化を促進!鈴与シンワートの物流コンサルティングサービス

現在、EC市場の拡大と比例し、労働力の需要が高まっています。一方で、トラックドライバーなど労働力の供給が減少し、需給のギャップが深刻化しています。働き方改革による時間外労働の上限規制、いわゆる物流の2024年問題で従来とおりの物流サービスの提供が困難になっています。

物流業界のこうした課題に対して、自動化・デジタル化による業務効率の向上や省人化を実現し、さらにデジタルデータを活用してビジネスモデルの変革や経営基盤のデジタル化を目指すことが物流DXです。
インターネットに接続されていない作業を、デジタル技術で可視化することにより課題の解決と価値創造を図ることが物流DXと言えるでしょう。

物流DXによる改善

1.ラストワンマイル配送の最適化

輸配送では、配送拠点から顧客へ納品するラストワンマイルでの配送ルートや手順の最適化をAIで提案するシステムがあります。
配送の最終段階であるラストワンマイルは、効率化が求められる重要なポイントです。AIを活用したシステムは、配送ルートや手順を最適化し、時間とコストの削減を実現します。結果、顧客満足度の向上も期待されます。
特に都市部では、配送効率が顧客体験に直結することから、精密なルート計画が不可欠です。AI技術は、リアルタイムで交通情報を分析し、最適な配送ルートを提案することで、配送の遅延を防ぎ、顧客ニーズに応えます。
これに伴い、企業は競争力を強化し、市場シェアを拡大することができます。ラストワンマイルの効率化は、物流業界全体の生産性を向上させるだけでなく、環境負荷も軽減し、持続可能な都市物流の実現に寄与します。

2.求車求貨システムでの輸送効率向上

貨物を運び終えた帰り便が空車になることは、輸送効率を著しく低下させます。求車求貨システムを活用することで、帰り荷となる貨物の輸送を求めている荷主と輸送会社を効果的にマッチングさせ、無駄のない輸送を実現します。
求車求貨システムは、物流コストの削減とともに環境負荷の軽減も図れるため、物流業界の新たなスタンダードとなる可能性を秘めており、顧客に対してより良いサービスを提供するための手段となるでしょう。

3.倉庫管理のデジタル化による効率化

倉庫管理のデジタル化は、生産性向上の一助となります。作業者の負担を軽減し、ピッキングミスなどのヒューマンエラー低減にも貢献します。
倉庫管理のデジタル化は、リアルタイムでの在庫管理を可能にし、サプライチェーン全体の最適化を支援します。結果として、在庫回転率の向上や保管スペースの有効活用により、物流拠点全体の稼働効率向上を図ることができます。

4.デジタルツイン技術を用いた工場・倉庫機能の強化

デジタルツインとは、倉庫や工場など現実の物体や環境からデータを収集して、仮想空間に全く同じ環境を再現する技術です。従来は不可能であった、数値化・可視化された検証結果を活用し、工場や倉庫の新設時やラインなどの設備・レイアウト変更といった現実の設備計画へ反映することができます。

<デジタルツインのメリット>

①物理的制約(ヒト・モノ)、時間的制約、金銭的制約を低減
②各種作業・処理の生産性を精緻に再現、検証することで、実データ(現実に近いデータ)での検証が可能
③あらゆるものを数値化して仮想空間で再現ができ、さらに数値化したデータの利用が可能

「デジタルツイン技術を用いた物流コンサルティングサービス」を利用することで、数値化、可視化された判断材料が増加し、判断精度が向上します。

参考:鈴与シンワート デジタルツイン技術を用いたコンサルティングサービス https://logistics.shinwart.co.jp/digital-twin/

倉庫、物流拠点におけるDXの事例

倉庫の保管効率向上とスタッフの生産性向上を実現する新たなシステムも生まれています。

従来、保管品目と保管数量の増加への対応は、保管スペースの水平方向への拡大と、積み段数の垂直方向への増段が一般的でした。自動倉庫やラックでは在庫管理の複雑さと誤出荷を避けるため、同じ保管スペース内で異なる品目の混在は避けられていました。そのため保管数量が少ない場合は上部空間にデッドスペースが生じていました。
こうしたデッドスペースを圧縮し、最小化するオートストアの様な新しい設計思想の保管システムも誕生しました。

また、従来のピッキングでは貨物の保管場所まで倉庫のスタッフが移動し、ピッキング対象の貨物を目視で探すことが一般的でしたが、デジタル表示器で対象貨物を指示するデジタルピッキングシステムの導入やピッキング対象の貨物を倉庫スタッフの場所まで移動させるシステムの導入が進んでいます。

デジタル技術を活用したシステムの導入により、倉庫スタッフの移動距離・時間の削減、目視で探す作業負担の軽減など、生産性向上につながっています。

物流DXによる価値創造

倉庫や物流拠点における作業の迅速化や作業負荷の軽減は、人手不足の物流業界における省人化や、生産性の向上に寄与します。また、受注後同日配送の実現など顧客サービスの向上にも貢献します。
DXによって生まれる価値は従来のアナログ作業を可視化できることです。デジタルデータを蓄積することで新たな価値を生み出す可能性もあります。蓄積されたデータを分析し活用することで、物流波動に対する適切なリソース配置をすることもできます。

物流DXまとめ

物流DXは、属人的でアナログな業務の効率化だけではありません。デジタル化することによる業務の可視化や、蓄積したビッグデータをAIで分析・活用することにより、新たな価値を生み出す可能性があります。

鈴与シンワートでは「鈴与グループが持つ物流ノウハウ」と「鈴与シンワートのシステム開発力」を活かし、物流の課題に対する最適なソリューションを提案します。

鈴与シンワートが物流の課題解決をした日比谷花壇様の導入事例はこちらからご覧になれます。

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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