第8回 EC物流の成功に欠かせない返品戦略がビジネスの成功を左右する

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第8回 EC物流の成功に欠かせない返品戦略がビジネスの成功を左右する

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第8回 EC物流の成功に欠かせない返品戦略がビジネスの成功を左右する

公開 :2023.08.17 更新 : 2023.08.17

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EC(電子商取引)市場は躍進し、世界中で急速な成長と変化を遂げています。消費者のオンラインショッピング需要の拡大に伴い、従来のリアル店舗とは異なる購買行動も増加しています。それは返品の一般化です。EC市場では返品を前提とした購買行動が増加しています。

特にアパレル商材はインターネット上ではサイズやカラーなどの現物確認が困難なことから返品率は増加しています。物流業界においては在庫管理や輸配送などのプロセスがますます複雑化し、スピーディーで効率的な運営が求められる中、EC物流における返品処理の最適化が課題となっています。

このコラムではEC物流における返品処理についてお伝えします。

ECでは一般的になった返品

時間と場所の制約を受けず、さまざまなものやサービスを購入できるECは人々の生活を大きく変えました。加えて、EC市場の成長にともない、消費者の購買行動も変容しています。たとえば、アパレルのECでは複数のサイズやカラーの商品をオーダーし、体型やイメージにあった商品は手元に残し、それ以外は返品するといった購買方法が増えています。従来、返品にはマイナスイメージがありましたが、ECでは返品が一般的になっています。むしろ返品ありきのビジネスとも言えるかもしれません。

民間のエルテックス社の2021年の調査によると、ECにおける出荷数に対する商品返品率が5〜10%となっている企業が多くなっています。

参考:エルテックス 第17回通信販売調査レポート 「通信販売事業関与者の実態調査2021」https://www.eltex.co.jp/lab/research/20210827

ECにおける返品処理のプロセス

ECにおける返品処理のプロセス

ECにおける返品処理は、消費者からの返品や不良品の処理、リサイクル、再販売などを含む一連のプロセスを指します。ECにおける返品処理のプロセスについて説明していきます。

1.返品処理:

商品の返品は、消費者からの返品要求を受けて、返品された商品が倉庫に入荷することからスタートします。返品理由を大きく分類すると、生産者や販売者起因、消費者起因、物流起因の3つになります。

2.品質評価と検査:

受け入れた商品を検査し、良品か不良品か判断し、再販売可能な状態かどうかを評価します。また、不良の状態や損傷の特定と修理や再加工が必要かどうかを判断します。返品された商品の品質を正確に評価し、再販売可能かどうかを判断することは難しい場合がありますが、多くのECビジネスでは返品ポリシーを明確にしています。消費者起因の返品でも開封の状態や使用の有無、商品の程度で返品可否や返金の対応が異なります。

3.不良品処理:

不良や欠陥の原因が、生産者や販売者起因の場合、該当の商品は生産者や販売者へ戻されます。不良の原因を特定し、修理や交換を行うプロセスに進みます。物流起因の場合は返品処理で発生したコストを請求して処理します。再加工や美装加工、再パッケージングにより再販売が可能な商品は、加工のプロセスへと進みます。

4.再販売:

品質評価や判断で問題がなかった商品や、加工により供給側に戻った商品は再び販売用の在庫として管理されます。返品処理の一環として、返品や不良品、加工品の在庫は適切に管理する必要があります。

5.リサイクル・廃棄物処理:

使用済み商品や梱包材、破損品などは廃棄物として適切に処理されます。リサイクルやリユースによって環境への影響を軽減することも必要です。

返品処理のプロセスは、タイムリーな処理が求められます。たとえば、再販売のタイミングを逃すと不良在庫となり管理コスト増大の要因となったり、販売の機会損失となるため、スピーディーな処理が求められます。

EC物流における返品処理の課題

物流は血液の流れに例えて、動脈物流と静脈物流に分類できます。極めて単純化すると動脈物流は「生産者から消費者へ発生するモノの流れ」であり、静脈物流はその逆の「消費者から生産者へ発生するモノの流れ」になります。静脈物流は消費者などのエンドユーザーからの働きかけによって発生する物流とも言えます。静脈物流には返品物流や輸送用パレットなどの回収物流、産業廃棄物を輸送する廃棄物流なども含まれ、ECの返品処理もこの静脈物流に該当します。

ECの返品処理には生産者から消費者に向かって流れる動脈物流とは異なる点があります。
もっとも大きな違いは、返品される商品の状態や品質が様々であることです。通常、生産者や販売者から消費者に向けての出荷される商品は、検品が完了し品質が保証された良品です。

しかし返品処理される商品は、壊れたものや開封されたもの、試着や、使用されたものになります。消費者の元に届けられたあとの状態や使用状況は生産者や販売者側ではわかりません。

こうした状態の商品の返品を受け、交換品や代替品を発送したり、良品・不良品に仕分けて再販売や廃棄をしたりする作業は極めて複雑で手間がかかるイレギュラーなプロセスです。

動脈物流がオペレーションの中心となっている物流倉庫では、こうした返品作業に対する優先度やモチベーションが低くなり、顧客対応への遅れや、再販売できる商品の機会損失、不良在庫の蓄積や廃棄によるコストが発生しかねません。

返品は商品の状態によってお客様への返金処理が発生する場合もあります。物流領域での返品処理の遅れは会計処理の遅れにもつながり、顧客満足度の低下やCX(Customer Experience:顧客体験)を毀損します。そのため、ECの返品処理では標準的かつ効率的なオペレーションを構築するとともに、コスト削減を意識する必要があります。

EC物流の返品の課題解決の1つにはWMSを活用

EC物流の返品の課題解決の1つにはWMSを活用

返品された商品には複雑な工程管理が必要です。返品された商品の状態を確認し、再販売あるいは廃棄するまでステータスの管理と、後々のトレーサビリティーが要求されます。返品された商品の検査、良品・不良品の仕分け、良品の再加工、不良品の修理などステータスが変化するため、変化に応じた適切な在庫管理が必要です。

返品後の商品は一時的に保留品扱いや検品中のステータスで管理し、通常在庫との明確な区分が必要です。加えて、誤出荷の防止のため現物と在庫データの同期化が必須です。ECではリアルタイムのステータスの変更や在庫データの更新が要求されるため、属人的な作業で行うことは困難です。

こうした課題に、WMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)の活用が1つの解決策になります。WMSは返品された商品のステータス管理や在庫管理を効率的に行えるのみならず、ERP(Enterprise Resources Planning:基幹業務システム)の会計処理と連携させることで、在庫金額の適切な管理も可能となります。

まとめ

ECの返品処理に求められることは、返品プロセスの効率的かつシームレスな実行です。物流領域における適切な運用が、顧客体験や顧客満足度を高めることにもつながります。また、返品に関わるデータを分析しマーケティングに反映させることで、新たな市場を開拓できる可能性があるかもしれません。

EC市場における返品処理は、顧客満足度の向上や企業の成長の観点からも重要ですが、複雑なプロセスと課題があるため、オペレーションの最適化が必要です。一方でノウハウの蓄積もまだまだ少ない領域でもあります。 物流の課題解決については専門知識と経験が不可欠です。こうした課題に対して解決策を提供するのが、物流コンサルティングです。物流コンサルティングは業界のトレンドやベストプラクティスに精通し、効果的な物流戦略の構築を支援します。効率的な物流プロセスの確立やコスト削減、顧客満足度の向上などを図ることが可能です。

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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