「物流におけるムダ」とは何でしょうか。
物流部門は、プロフィットセンターである営業部門と異なり、コストセンターであるがゆえムダを削減し効率化を進めることが求められます。ムダを省き効率化を測ることが、収益向上への貢献につながります。
「物流におけるムダ」について、トヨタ生産方式「7つのムダの視点」から記します。
目次
そもそもムダとは何でしょうか。トヨタ生産方式でのムダの定義
そもそもムダとは何でしょうか。
小学館発行の大辞泉では「ムダ」について、「役に立たないこと。それをしただけのかいがないこと。また、そのさま。無益」と説明しています。
トヨタ生産方式を提唱し、世界の製造業に大きな影響を与えた大野耐一氏は、著書「トヨタ生産方式」の中で、ムダには以下の7つがあると述べています。
1. 作りすぎのムダ
2.手待ちのムダ
3.運搬のムダ
4.加工そのもののムダ
5.在庫のムダ
6.動作のムダ
7.不良を作るムダ
大野氏は「これらのムダを徹底的に排除することによって、作業能率を大幅に向上させることが可能となる」そして「作業者にとっても意味のないムダな作業を除くことは一人ひとりの働きがいを高めることに通じる」と述べています。
物流の領域においても、様々なムダが発生します。上記の7つのムダについて、物流の視点からどのようなムダが発生しているのか、ムダを無くすにはどうしたら良いのかを以下にまとめました。
1.作りすぎのムダ
物流部門のコントロールが及びにくい点が、作りすぎのムダです。製造部門で作られた製品は、販売予測や需要予測に基づいて製造されます。しかし、製造のロットサイズや原料の購買単位、季節性、そして販売状況の影響を直接受けるため、必要量以上に製造してしまうことや、需要変動によっては過剰在庫になる場合があります。作りすぎのムダは、倉庫の保管スペースを圧迫し、保管料を増加させます。
製造から販売にいたるサプライチェーンの上流から下流までを一気通貫にマネジメントできる組織があれば、作りすぎをコントロールできる可能性があります。一方、物流部門だけの場合は、倉庫の保管状況やスペースの状況、物流コストの状況を、ステークホルダーに発信、情報共有することで、物流の現場が抱える状況を少しでも理解してもらうようにアプローチすることも可能かもしれません。
2.手待ちのムダ
手待ちのムダとは、作業員の手が待ちの状態にあるムダのことです。設備が稼働せず空いている状態や、設備が故障して修理待ちの状態も該当します。
倉庫においては1週間のうち、入庫と出庫が特定の日に偏る場合があります。例えば、納品先の顧客は、翌週使用するモノは前週の金曜日に納品しておきたいと考えます。そうなると、倉庫では木曜日の出庫が増えるといったケースです。こうした場合、曜日によって作業量にばらつきが生じ、作業量の山と谷ができてしまいます。
作業量が平準化されるように、入出庫量をコントールできれば、手持ち状態のムダを減らすことができます。
3.運搬のムダ
運搬のムダについては、輸送上のムダと置き換えて記載します。筆者は在職中に「空気を運ぶな」とよく言われました。空気を運ぶムダが発生しない様にトラックの積載率を高める必要があります。
積荷も貨物の特性によって、重量勝ちなのか、容積勝ちなのかによって異なってきますが、トラックの最大積載量を運ぶ様に工夫する必要があります。
空気をたくさん含む綿のようなモノは、容積勝ちとなります。荷室の容積ばかり消費して重量的には多くを運べません。一方、1個あたりの重量が重い、金属のインゴットなどは、重量勝ちとなります。荷室はガラガラですが、重量的には積載量いっぱいになってしまいます。トラックの最大積載量は法律で決められていますので、(当然ながら法令遵守で過積載は認められません)容積と重量のベストな積載量を確認し、ムダな輸送をしない様にする必要があります。
特性の異なる貨物を、上手に組み合わせ積載することで、輸送のムダを減らせます。
4.加工そのもののムダ
加工そのもののムダについては、倉庫における流通加工が該当するのではないでしょうか。
例えば輸入されたモノについて、入庫後、国内流通用のラベルを新たに貼る、外装の箱を入れ替えるといったケースがあります。
こうした場合、必要以上の加工やムダな作業が発生しない様、作業手順の十分な確認をおこなうことが必要です。ありがちなのが、新たに貼付するラベルの記載内容が間違っていたために、作業のやり直しが発生するケースです。
上流の輸出元で国内流通用のラベルを、あらかじめ貼付して輸入することで、加工そのもののムダを減らせます。
5.在庫のムダ
在庫のムダについては、不良品もムダな在庫の一つとなります。不良品については通常の出荷と比べると担当者の対応も、優先順位が低くなり、処理が後回しになりがちです。担当者の気持ちも後ろ向きになりますので、なおさら放置されがちです。そのため、いつまでも倉庫の棚に保管されたままになります。ムダな保管料が発生するばかりでなく、棚卸しの際に会計監査で指摘を受け余計な時間が発生します。
定期的に不良品の在庫リストを出力し、関係者で、廃棄などの処理方法を検討するレビューミーティングなどを設定すると良いかもしれません。
6.動作のムダ
倉庫においては、貨物の入出庫と保管場所の間の移動動線を短くすることが、動作のムダを減らすことになります。
例えば在庫日数が短い貨物については、入庫と出庫の頻度が高くなります。そのため、入出庫の動線が短くなる場所に保管する方が、オペレーションの効率がよくなります。また、垂直搬送機(エレベータ)を利用する階上の保管エリアよりも、入出庫バースに近い保管エリアの方が効率は良いかもしれません。
一方、在庫日数が長く、入出庫の頻度が低い貨物については、倉庫奥のエリアや、移動の動線が長い場所が望ましいと言えます。
7.不良を作るムダ
不良を作るムダについては、不良を発生させないようにする点から記載します。
物流の現場では貨物の破損、いわゆるダメージによる不良が発生します。荷扱いの品質向上を目指していても、不良を100%発生させないようにすることは難しく、何らかのダメージが発生します。
しかし、不良の発生原因を突き止めることで、改善を進めることができます。不良が相次ぎその対応に追われる様であれば、それはムダな作業に他なりません。例えば貨物の外装やパッケージが強度的に弱く、何度も交換が発生するケースや納品先の顧客に迷惑をかけてしまう場合は、メーカーに対して改善を要請する必要が生じます。当然コストの課題が絡みますので、購買調達部門とも検討が必要ですが、不良発生によるコストや、機会損失のリスクも説明していく必要があります。
ムダを減らして効率的な物流オペレーションをおこなうために
一つの工程を行うためには必ず時間がかかります。加えて、その時間には必ずコストがひも付きます。ムダな工程は、時間とコストの両方を浪費していることになります。
毎日3分のムダが発生している場合、年間では780分、時間に換算すると13時間になります。(1年は52週で試算。1週あたりの稼働日を5日とすると、年間の稼働日は260日。毎日3分のムダが年間では780分、時間に換算すると13時間)
作業員1人だけでなく、各所で発生しているとなると、そのムダは累積されていきます。ムダを無くし、早く帰宅ができると心身の休養もできます。
現場にどっぷり浸かっていると、今までやってきた作業や工程をよしとするため、当事者にとって、ムダか否かの判断が難しい場合があります。
コンサルティングに入ってもらい客観的に診断してもらうことで、業務効率改善を図っていくことも一つの方法として考えられます。
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