目次
1.はじめに
今回は、倉庫レイアウトについて取り上げてみます。
筆者は、倉庫会社の社員として勤めていた頃に業務改善のために倉庫レイアウトを変更しようと試みた結果、失敗してしまったという苦い経験があります。倉庫レイアウトの変更は上手くいけば業務改善に繋がりますが、失敗すると費やした労力と時間が無駄になってしまうのでなかなか難しい試みです。筆者がどのようにして失敗したのか失敗経験談とともに、倉庫レイアウトの改善について解説していきます。ご興味のある方は是非このコラムを参考にしてみてください。
2.倉庫レイアウトとは
倉庫会社であれ荷主であれ、立場は違っても倉庫に携わる者にとって倉庫レイアウトは重要な問題です。倉庫のどこにどのように商品を保管・配置するかという倉庫レイアウトについて悩まれている方は多いかと思います。
例えば、商品Aと商品Bの保管ロケーションを入れ替えたとします。ただこれだけの行為でも、入出庫の作業時間が短くなったり長くなったり、作業中の商品破損率が増加したり、減少したりします。倉庫レイアウトを少し変えるだけでも良くも悪くもなりえます。
3.なぜ最適な倉庫レイアウトを検討するのか
ズバリ、コストを抑えるためです。倉庫内作業の効率を上げたい、必要なレイアウトスペースをできるだけ小さくしたいといった目先の問題を解決するための手段として考えるケースもありますが、いずれも最終的にはコストを抑えたいという目的につながります。
物流コストを抑えることを目的とするとき、そのための手段としては、自動式機械倉庫の導入、作業員の習熟度向上などいくつか考えられます。ただ、自動式機械倉庫の導入であれば初期投資費用が必要ですし、作業員の習熟度向上であればある程度の習熟レベルまで進んでしまえばさらなるレベルアップは難しくなってきます。その中で、最適な倉庫レイアウトの検討は、初期投資費用は不要で比較的誰でも着手しやすく取り組みやすい試みです。
4.どのような倉庫レイアウトが最適か
経験上、筆者は(1)法令を遵守しており、(2)安全性が高く、(3)作業時に、(4)条件や制約等がある中で合理的かつ最大限の効率化を期待できるようなレイアウトが最適であるのではないかと考えています。
(1) 法令を遵守
保管する商品によっては法令による制約や制限が出てきます。
(例、消防法による危険物取扱の規制など)
(2) 安全性が高い
作業員と商品の両方にとって安全であることが必要です。
(例、高い場所での作業を避ける、重い商品をなるべく低い場所で保管する、など)
(3)作業時に
先月までであれば良いレイアウトであっても、今月もまたそれが良いレイアウトであるとは限りません。
最適なレイアウトは常に同じであるとは限りません。
(例、クリスマスシーズンの出荷繁忙期には出荷作業スペースを広めに確保する、など)
(4)合理的かつ最大限の効率化を期待
確保できるスペースの限度、使用機材、倉庫の種類など、倉庫環境はそれぞれで異なります。
さらにその中で、ピッキング作業時間なのか、保管効率性なのか、何を重視するのかによって“最適”は変わります。
5.最適な倉庫レイアウトを検討するのは大変
最適な倉庫レイアウトについて考えることは大変な作業です。なぜなら、何を以て”最適”とするのか、その定義はそれぞれの倉庫の環境、条件、タイミング等によって変わり、一概に定まっておらず、都度考えなければならないからです。gまた、それぞれが抱える問題も異なり、それに対する選択肢も多く用意されているので検討すべきパターン数も多くなりがちです。倉庫を一から新たに作るのか、倉庫を借りて自ら作業をするのか、今の倉庫レイアウトを見直すのか、それぞれのケースによって考慮すべき内容は大きく変わります。
【問題】→【選択肢】 ① 労働力の確保が難しい→自動倉庫を導入する? ② 大地震に備えたい→固定棚にする? ③ ネステナーを用意する→逆ネスと正ネスどっちが良い? ④ フォークリフトを用意する →エンジン式かバッテリー式か? (バッテリー式なら充電ポートが必要) |
6.筆者の失敗談(倉庫レイアウトの変更失敗)
筆者は、大手倉庫会社で勤務していたころに倉庫レイアウトの変更に失敗してしまった苦い経験があります。その失敗談がこのコラムを読んでくださっている方のご参考になるかもしれないので、少しだけ話にお付き合い頂けたらと思います。
数年前、筆者はとある倉庫ワンフロアの管理者として勤務していました。ある日、会社から筆者へ指示があり、「近々やむなくフロアの倉庫作業人員を減らさざるを得なくなったので、現状よりも効率が上がるような対応策を考えて実施しておくように。」とのことで、筆者は急ぎ、様々な対応策を検討することになりました。
作業員に対する研修を実施して業務習熟度を上げる策、新たな作業支援機器を導入してスピードアップを図る策など色々と思いつき、検討しました。
最終的には、現在保管されている商品の保管ロケーションを入れ替えて、直近3年の出荷データに基づく最適な倉庫レイアウトへ変更する策に決めました。なぜなら、この策であれば新たなコストも特段発生することなく、一会社員である筆者だけでも比較的手っ取り早く実行できるからです。
倉庫の現場作業責任者に毎日相談し、どんなレイアウトであればより作業効率がよりよくなるのか変更案を検討し続けた結果、1ヶ月ほどでレイアウト変更案がまとまりました。
その後タイミングを見計らい、作業員の方々に残業してもらって、変更案通りに商品の保管ロケーションを入れ替えました。筆者の計算では、変更前に比べて3~5%程度作業時間の短縮ができると見込んでいました。
しかし、結果は残念ながら失敗でした。過去の出荷データに基づいて、出荷頻度の高い商品を近くのロケーションにまとめて、それぞれの作業動線を短くすることによって作業時間の短縮を期待したレイアウトでしたが、商品のピッキングに来るフォークリフト車両や作業員がそのロケーションに集中しすぎて渋滞が発生し、逆に作業時間が増えてしまったのです。また、安全性にも問題があり、フォークリフトと作業員の動線が重なる部分が多くなってしまいました。
作業動線を短くすることばかり重視した結果、ピッキングのしやすさ、作業面での安全性を軽視してしまい新たな問題も発生し、以前よりも良くないレイアウトになりました。
結局、再度現場作業責任者と話し合い元のレイアウトに戻すことになりました。作業員の労力と時間を使い手伝ってもらったにも関わらず、結果として負担ばかりかけて大変申し訳ないことをしてしまったなと、筆者の反省すべき苦い経験となっています。
7.もし筆者がデジタルツイン技術を使えていたら
鈴与シンワート株式会社は、デジタルツイン技術を使ったコンサルティングサービスを提供しています。デジタルツイン技術とは、現実の物体や環境からデータを収集して、仮想空間に全く同じ環境を再現する技術です。従来と比べて、数値化・可視化された検証結果を計画に反映し、現実の設備計画などへ反映することができます。移行業務中は可視化された情報を共有するコミュニケーションツールとして活用できます。デジタルツイン技術の詳細はこちらのページをご参照ください。
デジタルツイン技術とは:https://logistics.shinwart.co.jp/digital-twin/
もし筆者が最適な倉庫レイアウトを検討していた当時、デジタルツイン技術を使ったコンサルティングサービスを受けていたなら、無駄な時間や労力を費やすことなく、最適なレイアウト案まで真っ直ぐに進めていたかもしれません。
仮に筆者の経験が十分豊富にあったとしても、最適な倉庫レイアウトを見つけ出すことは非常に難しい作業であることに変わらないものと思います。上手くいくと想定しても、実際にはやってみるまではわからない想定外の要素が出てくることもあります。
デジタルツイン技術があれば、「実際にやってみるまでわからない想定外の要素」を見つけ出せる可能性が高くなります。様々な視点から総合的に考慮して最適なレイアウトにたどり着けたことでしょう。
8.「倉庫レイアウトの最適化」のまとめ
今回は倉庫レイアウトについて取り上げました。現状物流に関しての問題や悩みを抱えている場合は、是非一度物流コンサルティング会社に相談してみてはいかがでしょうか?鈴与シンワートではデジタルツイン技術を使ったコンサルティングサービスを提供しています。興味を持たれた方は是非一度お問い合わせください。