セミナーレポート前編はこちらよりご覧ください。
2024年4月24日、鈴与シンワート株式会社は三田NNホール スペースDで、セミナー「世界最大級の物流テック展示会“LogiMAT 2024” 現地視察報告会」を開催しました。本セミナーはオンラインでも配信され、多数の方々が参加されました。
“LogiMAT 2024”はドイツ南部のシュトゥットガルトにおいて開催された世界最大級の物流テック展示会です。鈴与シンワートは最先端の物流テクノロジーの動向を視察し、報告会を実施しました。本セミナーレポートでは現地視察の報告と最新の物流テックの動向に関するセミナーの模様について、前編と後編に分けてお伝えします。
<セミナープログラム> 1.主催者挨拶 2.“LogiMAT 2024” 現地視察報告/最先端物流テックとグローバルトレンド 3.構内物流(イントラロジスティクス)自動化の5レベルでみる技術と評価 4.パネルディスカッション/物流テック導入加速化の未来展望と課題 5.デジタルツイン技術を用いた物流コンサルティングサービス 6.質疑応答 |
目次
4.パネルディスカッション/物流テック導入加速化の未来展望と課題
「構内物流(イントラロジスティクス)自動化の5レベルでみる技術と評価」に続き「物流テック導入加速化の未来展望と課題」と題したパネルディスカッションが行われました。
パネリストとして河口氏、渡辺氏、増田氏が登壇、菊田氏をモデレータに “LogiMAT 2024” の視察内容とパネリストの専門領域の知見を交えた意見交換がされました。
菊田氏:「まず、CMC Packaging Automation社の『CMC CartonWrap DUO』ですが、これは自動可変梱包装置ですね」
増田氏:「これは商品のサイズが異なっていても、フリーサイズでパッキングすることができます。そのため、異なる大きさの商品ごとに複数の梱包ラインを導入する必要がありません。箱だけでなく、メール便のような形状にも梱包できるフレキシビリティがあります。単一商品であれば1時間あたり約900パッケージを処理できるそうです。日本においても導入事例があるそうです」
菊田氏:「ちなみに梱包作業は、メタワークの研究対象なのでしょうか」
河口氏:「現在は対象ではありませんが、今後は梱包も対象になり得ると思います。梱包作業もさることながら、取り組むべき課題はダンボールの開梱作業です。カッターによる開封や検品は高負荷な属人的作業なので、今後メタワークによる課題解決の可能性もあろうかと思います」
菊田氏:「ダンボール梱包には課題がありますね。卸売業者では納品都度、大量のダンボールの開梱と廃棄が発生しているため、通い箱を利用するフィジカルインターネットの実証実験も進んでいます。続いてphotoneo Bright pick社の「Brightpick Autopicker」についてお伺いします。こちらはロボットハンドが付いたAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行ロボット)のイメージでしょうか?」
増田氏:「はい。指定されたロケーションまで自律的に移動し、棚からコンテナを引き出してピースピッキングまで行います。ピッキング後にコンテナを元の棚に戻し、梱包ステーションまで搬送できる点が特長です。GTP(Goods To Person)とも異なるコンセプトですね。専用棚の設置が不要で、既存の棚にも対応できるため、コストを抑制できるのではないでしょうか」
菊田氏:「日本のEC物流の現場にも相性が良さそうな摘み取り型のロボットですね。一方、メタワークの研究におけるピッキングでは、ものをつかむ研究が進んでいるそうですね」
河口氏:「VRゴーグルとコントローラーで、シンプルに『掴む』『保持する』『離す』ことから始めたいと考えています。遠隔で操作する人に細かくフィードバックできる手袋はまだまだ高価です。多くの現場に配布できるようになるには時間を要するため、まずはシンプルなシステムで、遠隔で働ける環境を作りたいと考えています」
菊田氏:「河口氏は自動運転の無人フォークリフトの研究もされています。メタワークにおけるマテハンの遠隔操作と人の介在についてはいかがでしょうか」
河口氏:「コンピュータによる自動化は定型的なインプットとアウトプットの定義付けが必要です。その一方、現場では例外的で非定型なイベントが発生するため、人が介在して対応した方が早く処理できるケースがあります。例えばフォークリフトのタイヤの空気が抜けていて、センサーの高さと微妙に合わないなど、自動化で対応が困難な部分には人が介在し、協働しながら徐々に自動化の範囲が拡大することが良いのではないでしょうか」
菊田氏:「続いて生成AIによるWMS支援について伺いたいと思います」
渡辺氏:「これは問いかければすぐに答えを出してくれる『スマートスピーカー』のようなシステムだと考えています。WMS管理画面のダッシュボードに、リアルタイムで知りたいKPIが表示でき、すぐに遷移できる操作性がメリットです。音声でイベントを通知してくれるようになれば、さらに効果的なシステムだと思います。さらにイベントに対して、人間の対応が生成AIにもフィードバックされ、AIが更に賢くなるループが必要だと思います」
5.デジタルツイン技術を用いた物流コンサルティングサービス
パネルディスカッション後、鈴与シンワート株式会社 システム開発事業本部 物流コンサルティング事業部長 鈴木 知伸氏(以下鈴木氏)が登壇し、同社が取り組む「デジタルツイン技術を用いた物流コンサルティングサービス」について説明しました。
デジタルツインとは現実世界から収集したデータをもとに、仮想的なデジタル空間を再現する技術です。現実世界では詳細な検証が困難なケースもデジタルツインによってシミュレーションが可能となります。シミュレーション結果は定量化、3D化され、経営層から現場まですべての階層の判断材料を増やし、判断精度の向上を図ることができます。例えば「棚の高さを変更することによって商品の収納率はどう改善するのか?」「ピッキング工程での最適な人員配置は?」「スタッフ1人あたりの作業時間や効率的な動線とは?」など、様々な分析ができます。
デジタルツインは施設面などのハード面だけでなく、作業などのソフト面についてもシミュレーションし、可視化できることがメリットです。経営層による投資判断上のリスク軽減にもつながります。
鈴木氏はデジタルツイン導入の効果について次のように話しました。
「実稼働している倉庫などでは、新設機器の導入効果の測定や検証は現実的に難しい側面があり、『実際にやってみないとわからない』となりがちです。しかし、鈴与シンワートのデジタルツイン技術を用いたコンサルティングサービスでは、10件のシミュレーションモデルを、費用面と生産効率で比較することができ、定量的に可視化された結果によって、判断精度を格段に向上させます。さらにシミュレーションによって想定外のトラブルを事前に防止できるため、収益力・競争力・組織力の向上、しいてはステークホルダーの満足度向上に寄与します」
鈴木氏の講演後、質疑応答が行われセミナーは終了しました。
このレポートでは、最先端の物流テック展示会内容と物流テックの最新状況についてお伝えしました。多くの方は目の前の業務に追われ、海外の展示会を視察することは難しいのではないでしょうか。筆者も、このセミナーを通じて海外の最新動向を視聴し、さらに視野を広げる良い機会となりました。
我が国は全方位で完璧な課題解決を目指す傾向になりがちですが、部分的にでも課題解決を図るツールがあれば、現場の属人的な課題や人材不足に対する解決になり得ます。また、導入のネックとなる投資判断の容易性や、導入しやすい料金システムへ整備する必要もあります。サブスクを活用することで初期投資のリスクを低減する仕組みや、デジタルツイン技術によるシミュレーションが、新規ツール導入に対するハードルを下げてくれる選択肢となります。
鈴与シンワートではデジタルツインによるコンサルティングサービスを行っています。
デジタル上に再現した仮想空間でマテハンの導入効果や生産性向上などをシミュレーションすることができます。実際の環境でシミュレーションが困難な現場の課題解決にはデジタルツインも選択肢の1つとなります。デジタルツインを活用したコンサルティングについて興味がある方は鈴与シンワートまで是非お問い合わせください。
https://www2.shinwart.co.jp/l/907272/2021-11-28/39gg2
また、こちらから本セミナー動画の閲覧が可能です。
是非ご覧ください。