「世界最大級の物流テック展示会 ”LogiMAT 2024” 現地視察報告会」セミナーレポート(前編)

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「世界最大級の物流テック展示会 ”LogiMAT 2024” 現地視察報告会」セミナーレポート(前編)

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「世界最大級の物流テック展示会 ”LogiMAT 2024” 現地視察報告会」セミナーレポート(前編)

公開 :2024.07.09 更新 : 2024.07.12

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2024年4月24日、鈴与シンワート株式会社は三田NNホール スペースDで、セミナー「世界最大級の物流テック展示会“LogiMAT 2024” 現地視察報告会」を開催しました。本セミナーはオンラインでも配信され、多くの方が参加されました。

“LogiMAT 2024”はドイツ南部のシュトゥットガルトにおいて開催された世界最大級の物流テック展示会です。鈴与シンワートは現地視察を行い、最先端の物流テクノロジーの動向を把握しました。本セミナーレポートでは現地視察の報告と最新の物流テックトレンドに関するセミナーの様子について、前編と後編に分けてお伝えします。


<セミナープログラム>

1.主催者挨拶 
2.“LogiMAT 2024” 現地視察報告/最先端物流テックとグローバルトレンド
3.構内物流(イントラロジスティクス)自動化の5レベルでみる技術と評価
4.パネルディスカッション/物流テック導入加速化の未来展望と課題
5.デジタルツイン技術を用いた物流コンサルティングサービス
6.質疑応答

1.主催者挨拶

はじめに主催者である鈴与シンワート株式会社 取締役 副社長執行役員 平野 文康氏が登壇し、開催の挨拶と本セミナーの趣旨を説明しました。

「このセミナーでは ”物流自動化・ロボット化のグローバル最先端技術情報から未来を展望する” 視点から、“LogiMAT 2024” で視察した最先端の物流技術トレンドを報告します。さらに業界最先端の研究に関する講演とパネルディスカッションを行います。最先端の物流テックの動向について触れていただく機会となれば幸いです」

2.世界最大級の物流テック展示会 “LogiMAT 2024” 現地視察報告

最初に鈴与シンワートの増田氏が登壇し、展示会の概要とベストプロダクト賞を受賞した2社の製品について紹介しました。

 ”以下、セミナー内容の抜粋”

LogiMAT 2024は2024年3月19日~3月21日にドイツ南部にあるシュトゥットガルト見本市センターで開催されました。この展示会はイントラロジスティクスソリューションとプロセス管理の国際見本市で、欧米アジアから42カ国、そのうちヨーロッパからは31カ国が参加しました。開催国であるドイツの出展社数が946社と最も多い中、日本からの参加は1社のみでした。

この展示会ではベストプロダクト賞が設定され、増田氏からアウォードを受賞した2社の製品について説明がありました。

LogiMAT 2024概要

1つ目はイタリアのCMC Packaging Automation社による「CMC CartonWrap DUO」です。これは商品に合わせて、ダンボールの板紙からパッケージを自動成型する梱包機です。この機械はダンボール箱だけでなくメール便のような封書タイプのパッケージも高速で成型できます。異なる荷姿の商品が混在しても同一ライン上で梱包できる点が画期的な製品です。また納品書の同梱やラベル貼付も可能です。

2つ目はスロバキアのphotoneo Bright pick社による「Brightpick Autopicker」です。これはロボットアームがついた自律走行型のオーダーピッキングロボットで、ピッキングエリアまで自律的に走行後、保管棚から商品が格納されたコンテナを引き出し、ロボットアームで商品をピッキングします。その後、再びコンテナを棚に戻し、パッキングステーションまで移動します。人によるピッキング作業をロボットに任せて、梱包工程に進むことができます。

LogiMAT2024ベストプロダクト省

 増田氏はLogiMAT 2024について次のように話しました。

「全体的な印象として新しいカテゴリーのロボットの出展よりも、これまでのロボットが進化し、組み合わされて連携させた製品の出展が目立ちました。例えば、2つ目の『CMC CartonWrap DUO』は属人的なピッキング作業を代替してくれます。このロボットはGTP(*1)のロボットの進化系ではないかと思います」

*1:Goods to person:ピッキング対象の商品が、ロボット等によってピッキング担当者のもとへ運ばれる定点ピッキングのこと

”抜粋終了”

3.LogiMAT 2024 現地視察報告と最先端物流

続いて河口氏からは遠隔で作業を行うメタワークの研究と現地視察の様子について講演がありました。

LogiMAT 2024 現地視察報告と最先端物流の様子

”以下、セミナー内容の抜粋”

河口氏は名古屋大学 工学研究科 情報・通信工学の専攻でユビキタス・コンピューティングや自動運転、自動機械に関する研究をされています。また、自動運転の観点からAGV等に関する研究や、VRゴーグルを装着したオペレーターが遠隔でものを操作する研究に取り組まれています。

さらに、人が遠隔で行う作業をAIが学習して自動化する分野についても研究されています。一方で現段階では自動化を100%進めるには困難な領域もあります。こうした領域は人が介在しながら処理を行いつつも、今後は人の介在度合いが減少していくと期待されています。

河口氏の研究領域は日本政府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に採択され、河口氏はバーチャルエコノミーの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備に携わっています。

河口氏はLogiMAT 2024の様子について次のように話しました。

「ロボットハンドやAMRと接続されたロボットが多数出展されている中、電動の自動フォークリフトの展示が極めて多かったことが印象的でした。フォークリフトによる作業は属人的なため、自動化作業が実現すると高い価値が生まれるのではないでしょうか。

また、個人的な見解ですが、視察した範囲では遠隔作業に関する展示は見当たらず、当方の研究領域である遠隔作業と人が介入しながら協働する自動化機器についてはまだまだ発展途上ではないかと思いました」

”抜粋終了”

4.世界最大級の物流テック展示会“LogiMAT 2024” 現地視察報告

続いて、一般社団法人 人間機械協奏技術コンソーシアム 理事の渡辺氏から、同法人の取り組みと生成AIツールについて報告がありました。

”以下、セミナー内容の抜粋”

人間機械協奏技術コンソーシアム(HMHS)では『人間と知能機械の行動、物と空間状況を理解し、ヒトの行動に働きかける技術開発』をテーマに研究をしています。このコンソーシアムは人間とロボットの協働を目指して名古屋大学、東京工業大学、早稲田大学、産業技術総合研究所の4つの機関を中心に一般企業も加わり設立されました。自動運転のセンシングや人間のセンシングに関する技術開発に取り組んでいます。

世界最大級の物流テック展示会“LogiMAT 2024” 現地視察報告の様子

渡辺氏からはベストプロダクト賞を受賞したドイツのLogistics Reply社から提供される「LEApedia」が紹介されました。この製品はWMS向けの自然言語の質問やコマンドに応答する双方向オープンAI言語システム(チャットボット)で、質問に対する回答ができるようになっています。

渡辺氏は以下のように話しました。

「LogiMAT 2024を視察した所感が3つあります。1つ目は、今後マルチメーカーのロボットの協働(統合)が進むだろうということ。2つ目は、人間と知能機械の相互作用が大切であること、特に出展社の1つが提示していた『AIを意思決定の最適化に活用すること』について共感しました。3つ目は、AIをメインに打ち出した展示とヒューマノイドは意外に少なかったということです」

”抜粋終了”

5.構内物流(イントラロジスティクス)自動化の5レベルでみる技術と評価

続いてエルテックラボ代表/物流ジャーナリスト 菊田 一郎氏(以下菊田氏)が「構内物流(イントラロジスティクス)自動化の5レベルでみる技術と評価」をテーマに講演をしました。

”以下、セミナー内容の抜粋”

2024年問題が注目されているように、今ほど物流が問題視されたことはこれまでにありませんでした。生産年齢人口が毎年約65万人減少し続けるなか、最優先すべきことは持続可能な物流です。そのためには「働く人の環境保全」と「地球と社会の環境保全」の2つが重要な要素となります。「働く人の環境保全」では、効率化と作業時間短縮による生産性の向上、及び、共同化と省力化・自動化・ロボット化によるDXが必要です。

次にイントラロジスティクスについて説明します。イントラロジスティクスとは入荷から方面別一次仕分けまでの構内作業に加え情報の流通も含めた概念です。これには多種多様なマテハンのみならずソフトウェアを連携する仕組みが必要です。最近では倉庫管理システムであるWMSの上位層としてロボットや倉庫を統合運用するWES(Warehouse Execution System)が誕生しています。さらに稼働実態シミュレーションやリアルタイムモニタリングを行うデジタルツインが注目され、物流プロセスの自律化が進んでいます。

一方で、構内作業においては依然として属人化されているピッキングや梱包作業がボトルネックとなっています。日本における自動化レベルはまだまだ発展途上であり、WMSを導入済の倉庫はまだ半数との調査結果もあります。

”抜粋終了”

菊田氏は次のように話しました。

「物流センターのデジタル化・自動化推進のステップを俯瞰するため、『物流センターDX化への”自動化レベル 1 to 5”』を提唱しています。レベル 1は属人化、レベル5は(全)自動化物流センターの実現です。

さらに(全)自動化物流センターの次に目指すことは、AIやロボットによって運用管理される自律化(オートノマス:Autonomous)です。 物流センターDX化の意義はGHG排出量の削減や荷役の生産性向上など、グリーン物流の実現や労働環境の改善に寄与することではないでしょうか。さらにEX(従業員体験)のX(革新)を実現し、ホワイトEXX=EX2こそが自動化、ロボット化の最終目的であると考えています」

前編レポートでは、プログラム3つめの「構内物流(イントラロジスティクス)自動化の5レベルでみる技術と評価」まで記しました。
後編は7月16日(火)に公開予定です。

また、こちらから本セミナー動画の閲覧が可能です。
是非ご覧ください。

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる)1967年生まれ。東京都出身。 大学卒業後、米国系のIT企業に入社。営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年に日本コカ・コーラ株式会社に転職。SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて一貫して国内輸送、3PL、在庫最適化、供給計画立案、購買業務に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。 2021年日本コカ・コーラ株式会社を退職し起業。葉山ウインズ合同会社を設立。宣伝会議(株)編集・ライター養成講座43期卒業。上阪徹のブックライター塾第9期卒業。ダイレクト出版(株)セールスライター認定コース修了。物流ライターとして活動中。大手上場企業のオウンドメディアにてDXに関する記事も執筆中。

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