第31回 フィジカルAIと物流領域における動向

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第31回 フィジカルAIと物流領域における動向

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第31回 フィジカルAIと物流領域における動向

公開 :2026.05.28 更新 : 2026.05.28

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急速に普及した生成AIは、物理的なハードウェアと統合される次のステージへと進化しています。

フィジカルAIとは、高度なAIにセンサーや駆動系(アクチュエーター)を統合し、学習データをもとに、現実世界の状況を推論しながら自律的に動作する技術です。

鈴与シンワート関連コラム紹介バナー|フィジカルAIとは?生成AIとの違いや物流領域への活用

今回のコラムでは、物流領域におけるフィジカルAIの動向(2026年4月時点)についてお伝えします。

1.フィジカルAIに関する国内外の動向

フィジカルAIは、現実世界の状況を把握・推論しつつ、自律的にさまざまなタスクを処理します。特に物流の領域では、これまで人が担ってきた荷役作業の自動化や、トラックの自動運転などへの活用に大きな期待が寄せられています。

フィジカルAIに関する海外の動向

2026年1月6日〜9日に米国のラスベガスで開催された、世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」では、2026年は「フィジカルAIへの転換点」として位置づけられました。

さらに2026年3月16日〜19日に米国のサンノゼで開催された「NVIDIA GTC」では、NVIDIAのCEOであるジェンセン・ホアン氏は「フィジカルAIはすでに到来している」と述べています。「NVIDIA GTC」とは、米国のAI・半導体大手企業であるNVIDIAが主催するAIカンファレンスです。世界各国から、数万人規模の開発者や研究者、ビジネスリーダーが参加して最新の技術動向が発表されるため、各界から注目を集めています。(※1)

海外のフィジカルAIの導入事例

グローバル物流企業であるDHLグループは、多くの領域でフィジカルAIの導入を進めています。

四足歩行ロボットや人型ロボットで知られるロボット開発企業「ボストン・ダイナミクス」と提携し、トレーラーからの荷降ろしや段ボール箱の取り扱いを自律的に行う倉庫ロボット「Stretch」を導入しました。この事例では、 1時間あたり最大約700個の箱の荷降ろしが可能であることが実証されており、作業員の身体的負担を軽減しています。(※2)

国内の動向

フィジカルAIは、国内においても、製造業や物流業、サービス業における人手不足解消の切り札として注目を集めています。

内閣府と経済産業省は2026年2月12日付の「第1回AI・半導体WG事務局説明資料」の中で、AIに関する現在の状況と今後の展開について次のように表現しています。


「足下、画像・音声・動画・各種センサーを 統合し現実世界を理解し動くフィジカルAIや、領域に特化して課題を解決するバーティカルAIの発展により、開発競争は新たな段階に突入。AIの実装は、工場、物流、医療、介護、防災等の現場そのものへ急速に拡大していく」(※3)

また日本は、フィジカルAIの要素となる高精度なセンサー技術や駆動部分に関して高い技術力を有しています。さらに、日本の製造業が蓄積してきた現場の暗黙知をAIで活用し、製造装置や自動車・ロボット産業に取り込むことで、日本の「勝ち筋」になると期待されています。

こうした日本企業のロボット関連技術への優位性は、先述の「NVIDIA GTC」でも言及されました。またNVIDIAは、これまでにも産業ロボットで高いシェアを握るファナック株式会社との提携や、株式会社安川電機との協業を発表しています。

鈴与シンワート関連コラム紹介バナー|フィジカルAIの技術と物流分野への導入事例

2.国内外の活用事例

フィジカルAIは、国内外のさまざまな領域で活用が進んでいます。

ここでは、海外と国内の主な活用事例を紹介します。

海外の活用事例

まず、Amazonが提供する「ドローンによる荷物の配送」について紹介します。Amazonは、米国でAmazonのMK30ドローンを活用し、5ポンド(約2.3kg)以下の荷物をフルフィルメントセンターから約7.5マイル(約12km)圏内の顧客に配送しており、英国でも2026年のサービス開始に向けた準備を進めています。

MK30は、高度な障害物検知・回避機能を搭載しています。LiDAR(レーザー光照射による距離計測技術)などの活用によって、操縦者が目視できない範囲でドローンを飛ばすBVLOS(目視外飛行)での自律飛行が可能です。 また、このドローンは小雨が降っている中でも飛行可能で、通常60分以内に配送を完了します。(※4)

また、米国の大手スーパーマーケット企業のWalmartでは、世界最大級のドローン配送を実現しています。2021年にドローン配送の試験を開始し、2025年6月にはアトランタ・シャーロット・ヒューストン・オーランド・タンパの5都市・計100店舗でのサービス展開、数百万世帯を対象にサービス拡大を進めていると公表しています。また、2025年6月時点で、約15万件の配送実績があるとされています。

このサービスでは、AIを活用した飛行経路の最適化や、リアルタイムの環境分析による障害回避技術が導入され、安全性の向上を目的とした運用・技術導入が進められています。(※5)

地上では、Neolixが、自律走行が可能なロボバンによってラストマイルの配送を自動化しています。ロボバンとは、バン型の自動運転車両を指します。高度なセンサー技術とAIを統合することで、地図に頼らずにcm単位で位置を把握する自律走行を実現しています。(※6)

国内の活用事例

国内においても、フィジカルAIの活用に向けてさまざまな取り組みが進められています。

Telexistence株式会社は、AIと遠隔操作技術を駆使したコンビニエンスストアの飲料棚補充ロボットを開発し、人手不足に対応する自動化を進めています。(※7)

また、同社は、2025年9月に株式会社セブン-イレブン・ジャパンと戦略提携し、2029年中の店舗導入を目標に、生成AI搭載ヒューマノイドを開発中です。

国内においてもドローン物流の取り組みが進んでいます。例えば、エアロネクスト社は物流に特化した新型ドローンを開発しています。このドローンは長距離飛行と高効率な輸送を実現します。(※8)

さらに、ソフトバンク株式会社は、株式会社安川電機と連携し、自社の物流倉庫でフィジカルAIの検証を実施しました。状況を理解するVLM(視覚・言語モデル)と、ロボット上で動作を生成するVLA(視覚・言語・動作モデル)を組み合わせることで、作業ごとに形状や重量が異なる商品を整列させる作業の自動化の実現可能性を示しています。(※9)

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3.まとめ ―フィジカルAIの今後

少子高齢化による人口減少が進む日本では、フィジカルAIは労働力の新たな担い手として、物流業界をはじめとしたさまざまな領域での活用が期待されています。

特に物流の領域では、人手不足や作業効率化を背景に、生成AIをマテハン(マテリアルハンドリング)に組み込む動きが加速しています。

生成AIやフィジカルAIの社会実装が加速する一方で、新たな課題も想定されています。

人とロボットが共存する社会は、人類がこれまでに経験してこなかった新たな社会形態です。工場などの閉鎖的な環境では人とロボットの共存が進んでいますが、社会全体にフィジカルAIが広く実装された状態を人類はまだ経験したことがありません。

そうした中、ロボットと協働する人の不安の解消を目指す取り組みも進んでいます。NECでは、人の動きと心理状態を予測する「世界モデル」を活用し、先回りしてロボットを制御するフィジカルAIを世界で初めて開発したと発表しています。人が感じる不安を軽減し、人とロボットの協働の実現に向けた取り組みが進められています。(※10)

物流業界に留まらず、製造業の生産ラインでも最適化されたフィジカルAIが導入され始めています。こうしたフィジカルAIの実装には、デジタルツインを活用したシミュレーションが必要です。

本コラムを掲載している鈴与シンワートではデジタルツイン技術を活用したコンサルティングサービスや課題解決を提供しています。

「鈴与グループが持つ物流ノウハウ」と「鈴与シンワートのシステム開発力」を生かし、物流課題の可視化と最適なソリューションの提案を行っています。

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以下、出典一覧:


(※1)出典:Robotics 24/7 『NVIDIA GTC 2026: NVIDIA, global robotics leaders look to take physical AI to the real world』
https://www.robotics247.com/article/nvidia-gtc-2026-nvidia-global-robotics-leaders-look-to-take-physical-ai-to-the-real-world

(※2)出典:DHL group『DHL Group signs MOU with Boston Dynamics for additional 1,000-robot deployment and accelerates cross-business automation strategy』
https://group.dhl.com/en/media-relations/press-releases/2025/dhl-group-signs-mou-with-boston-dynamics-and-accelerates-cross-business-automation-strategy.html

(※3)引用:内閣府・経済産業省『第1回AI・半導体WG 事務局説明資料 2026年2月12日』
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/seichosenryakuwg/aisemicon01/shiryo04.pdf

(※4)出典:Amazon『Amazonがイタリアとイギリス、および米国内3か所目となる地域でのドローン配送の開始を発表』
https://www.aboutamazon.jp/news/delivery-and-logistics/amazon-is-launching-ultra-fast-drone-deliveries-in-italy-the-uk-and-a-third-location-in-the-u-s
画像出典:https://www.aboutamazon.com/news/transportation/amazon-prime-air-drone-delivery-mk30-photos

(※5)出典:Walmart『Walmart Takes Flight With Drone Delivery Expansion to Five New Cities, Redefining Fast, Flexible Retail』
https://corporate.walmart.com/news/2025/06/05/walmart-takes-flight-with-drone-delivery-expansion-to-5-new-cities-redefining-fast-flexible-retail

(※6)出典:『Neolix Makes CES Debut with Next-Generation AI-Powered Autonomous Logistics Solutions and Comprehensive RoboVan Portfolio』
https://www.prnewswire.com/news-releases/neolix-makes-ces-debut-with-next-generation-ai-powered-autonomous-logistics-solutions-and-comprehensive-robovan-portfolio-302655119.html

(※7)出典:Telexistence『Telexistence、新型ロボット『TX SCARA』をファミリーマートGLP ALFALINK相模原店に導入。バックヤードにおける飲料陳列業務を独自AIシステムで自動化』
https://tx-inc.com/ja/blog/2021/11/09/11458

(※8)出典:エアロネクスト
https://aeronext.co.jp/news/kisogun_poc
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000163.000032193.html

(※9)出典:ソフトバンク『フィジカルAIを現場へ ― 物流倉庫の実タスクで学習・動作を検証』
https://www.softbank.jp/corp/technology/research/topics/214

(※10)出典:NEC『NEC、人の動きと心理状態を予測する世界モデルを活用し、先回りしてロボットを制御するフィジカルAIを世界で初めて開発』
https://jpn.nec.com/press/202603/20260312_01.html

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著者:蜂巣 稔

蜂巣 稔(はちす みのる) 物流ライター・ビジネスライター。東京都出身。 大学卒業後、外資系IT企業の営業職を経てバックオフィスで輸出入、国内物流を担当。1999年通関士試験合格。 2002年、日本コカ・コーラ株式会社に転職。以後18年以上にわたり、SCM(サプライチェーンマネジメント)部門にて国内輸送、供給計画立案、在庫最適化、オペレーション最適化に従事。飲料原料のサプライチェーンの上流から下流まで精通。2021年日本コカ・コーラを退職し起業。宣伝会議編集ライター養成講座卒業。以後、BtoBのビジネス領域を軸に活動中。実務経験がある物流ライターとして企業取材、導入事例、経営層・統合報告書のインタビュー、広報誌等の執筆で活動中。生成AI領域の執筆実績も多数あり、フィジカルAI領域についても強化中。グリーンロジスティクス管理士、日本インタビュアー協会認定プロインタビュアー。
noteアカウント:https://note.com/minoru_hachisu/n/n64b39a3de498

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