「VUCA」という言葉がビジネスの世界で使われるようになったのは2010年代からです。「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、社会やビジネスなど情勢の未来の予測が困難になることを意味しています。コロナ禍を経て、社会や事業環境は急速に変化し、将来を見通すことはより難しくなりました。こうした中、物流の世界においても、変化に対して柔軟かつスピーディーに対応できる仕組みの構築が求められ、「ベンダーフリー」というアプローチが注目されはじめています。本コラムでは「ベンダーフリーによる物流課題の解決」についてお伝えします。
目次
1.ベンダーフリーとは
ベンダーフリーとは、特定のメーカーや販売代理店(ベンダー)の製品やサービスにとらわれず、複数の企業の製品やサービスを組み合わせて利用したり、自社でシステムの構築をしたりするなどの方法で課題解決を目指す考え方です。特定製品の提供はせず、顧客の課題に対して様々なソリューションを提案するコンサルティング会社のアプローチもベンダーフリーといえます。
ベンダーフリーの反意語として「ベンダーロックイン(ベンダーロック)」があります。ベンダーロックインとは、特定のベンダーだけに依存し、他社製品やサービスへの移行が難しく、変化への柔軟な対応やコスト削減が困難になる状態を指します。
ベンダーフリーもベンダーロックインも、元々IT業界では頻繁に使用されてきた言葉ですが、物流業界でもベンダーフリーという言葉が使われ始めています。
2.物流を取り巻く環境とベンダーフリー
2024年問題の認識が世の中に広まったとは言え、物流業界における担い手不足は依然として深刻な状況が続いています。こうした中、多くの人手を必要としない自動化や省人化が求められています。また、自動化などに最適な設備や機器の選択も多くの企業にとっての悩みの種ではないでしょうか。
物流業界で多くの割合を占める中小・中堅企業では、多額を投資して導入したマテハンや自動化機器が想定通りのパフォーマンスを発揮できず、経営の負担や足枷になってしまうケースがあります。また、特定ベンダーに紐づいた大型の設備や機器の場合、拡張性や柔軟性に制約があったり、物流拠点を移動した際に再利用できなかったりするケースもあります。重厚長大なシステムは流動的な環境の変化に対して、柔軟な適応が難しい傾向が見られます。
また、高スペックな設備や機器が必ずしもベストとは限りません。物流業界には “物流波動” とよばれる繁忙期と閑散期の波があります。設備や機器を特定のベンダーに任せすぎると、入出庫量や保管量の変動に応じたリソースの配分ができないケースもあります。経済成長が望めない我が国において、これまでの直線的な成長を前提とした設備投資ではなく、変化に柔軟に対応できる流動的な設備投資が必要とされているのではないでしょうか。
3.ベンダーフリーのメリットとデメリット
将来を見通すことが難しい環境の下、物流課題の解決策の1つとなるベンダーフリーのメリットとデメリットをご紹介します。
ベンダーフリーのメリット
1.特定のメーカーなどに縛られないため、自社の課題に対して複数の企業の製品やサービスの中から、最適なソリューションの検討と選択ができること
2.課題に対して過剰なスペックの実装や過剰な投資を避けることができるため、新しい仕組みを導入した後に、いわゆる「帯に短し襷(たすき)に長し」といった「結局は使えない」いう状況を回避できること
3.ベンダーの製品やサービスを起点とするプロダクトアウト的な見解から、自社の課題解決に合わせたアプローチができること
ベンダーフリーのデメリット
1.自社の課題に対して、最適な製品やサービスの情報を収集し、検討、選択するための知見や経験が必要であること
2.複数のベンダーを調整しながらプロジェクトを進めなければならないこと
3.複数メーカーの製品やサービスの組み合わせによって、目的とするパフォーマンスを実現し、投資対効果が発揮されるように要素を組み合わせるノウハウが必要であること
4.ベンダーフリーによる物流課題の解決
ベンダーフリーは自社の物流課題の解決を目指すアプローチの1つですが、複数ベンダーの製品やサービスを、最適なパフォーマンスを発揮できるように組み合わせるノウハウや、導入したシステムのチューニングが継続的に必要となります。さらに物流の仕組みそのものを変容させる、物流DXへの取り組みが必要となることもあります。
こうした取り組みに対して自社での解決が難しい場合に伴走してくれる存在が、物流課題の解決を専門とする物流コンサルティングです。
5.物流業界のベンダーフリーによる課題解決のまとめ
社会環境の変化に伴い、事業環境の変化は今後も続きます。現時点での課題に対する「最適な解決策」が、将来も有効であり続けるとは限りません。物流やサプライチェーンを取り巻く環境が、地政学的なリスクや気候変動に伴うリスクなどの想定できない外部要因によって、急激に変化する可能性もあります。これからはそうした変化に対して柔軟かつ流動的に対応できるシステムが必要となります。
鈴与シンワートは特定のベンダーや製品、サービスに縛られないベンダーフリーのソリューションを提案し、お客様の物流課題を解決します。物流の知見と、システム開発実績が豊富な鈴与シンワートのコンサルタントがお客様に寄り添い、サポートします。
鈴与シンワートでは「鈴与グループが持つ物流ノウハウ」と「鈴与シンワートのシステム開発力」を生かし、物流課題を解決する物流プロセスの改善と最適なソリューションを提案します。まずはこちらから、お気軽にお問い合わせください。
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