目次
1.はじめに
みなさまこんにちは、今回は倉庫業務における人力作業の自動化および機械化について取り上げます。
昨今の日本ではあらゆる業界で人員不足が問題になっていますが、特に物流業界では「2024年問題」と呼ばれるほど深刻化しており、私たちの生活に直接影響を及ぼすほどの厳しい事態となっています。人員不足の解決には、労働者の賃上げや労働環境の改善などの取り組みが必要ではあるものの、人件費高騰など企業の負担が大きくなるため、それらを推し進めることは決して簡単ではありません。
そんな中、倉庫業務の人力作業を自動化および機械化する動きが近年注目されています。2021年からの新型コロナウイルス感染拡大のBCP対策に伴い、物流の2024年問題への備えとしても、自動化および機械化を積極的に検討・導入する企業が増えています。
筆者自身も倉庫業務の自動化および機械化の案件に携わる機会が多くあり、それらが成功するケースもあれば、残念ながら失敗するケースもあります。そこで今回は、「どのように倉庫業務が自動化および機械化できるのか」、「倉庫業務の自動化および機械化にはどのような特徴があるのか」、「導入を検討する際にはどのような点に注意すべきか」について、筆者の経験に基づいてご紹介したいと思います。
2.自動化および機械化の目的
倉庫業務を自動化および機械化する目的として、以下のものが挙げられます。
① 省人化
倉庫内作業員の求人応募件数が減少しており、企業の人材確保は以前よりも難しくなっています。人員不足が慢性化している職場も珍しくなく、今後も人口減少に伴いこの状態が継続するとみられています。そこで、企業が自動化および機械化を進めることによって、業務効率が上がり、業務運営のための必要作業人員数を減らすことができます。
② 業務効率化
自動化および機械化によって、より効率的でスピーディに業務ができます。例えば自動倉庫を導入した場合、床から天井まで倉庫内の保管スペースを無駄なく活用でき、保管効率が向上します。倉庫の天井高は6m前後であることが多く、一般的な住宅よりも高さがあり、大概デッドスペースとなっています。このデッドスペースを極力無くして倉庫を立体的に活用することが重要です。
③ 業務の安定化と品質向上
人が作業をする以上、どうしても人的ミスなどのリスクはつきものです。倉庫業務においては、誤出荷や破損などのミスが発生します。人が関わる作業を極力少なくしこれらのミスやリスクを減らす事によって、業務の安定化と品質向上を期待できます。
④ コスト削減
上述①~③をクリアできれば、倉庫関連のコスト削減が期待できます。企業は利益を追求することが使命ですので、経営者としては最重視すべきポイントです。
3.どのような作業を自動化および機械化できるのか
我が国が物流DXを推進していることもあって、自動倉庫システムを筆頭に、倉庫業務の自動化および機械化のための新しい製品が近年多く開発されています。入庫、保管、梱包、出庫まで、一連の業務を完全に自動化することも不可能ではなくなりました。今回は筆者自身が実際に利用したことのある機器の一例をご紹介します。
① バケット型自動倉庫・パレット型自動倉庫
自動倉庫とは、固定された棚に搬送装置が自動で物品を運んで保管する、システム管理された倉庫のことです。倉庫の天井まで棚が固定設置されており、倉庫空間を無駄なく保管スペースとして活用する事ができます。自動倉庫は物流DXの代表的なシステムと言えるでしょう。なお、自動倉庫には様々なタイプがあり、バケット型、パレット型など保管物品の形状に応じたタイプもあります。
② 自律型自動搬送機
自動搬送機とは、商品を倉庫内で移動させるときに自動で搬送できる機器です。搬送業務は、人が操作するフォークリフトで運ぶことが一般的ですが、自動搬送機はロケーション(保管場所)を指定しておけば、フォークリフトのドライバーがいなくても機器だけで物品を移動させる事ができます。また、人や他の搬送機器とぶつかることがないようにセンサーが内蔵されており、自律的に動く事ができるものがあります。まるで大きなロボット型掃除機のようです。
③ パレット垂直搬送機
パレット垂直搬送機とは、パレットに積載された物品を異なるフロアへ自動で移動させる機器のことです。②の自律型自動搬送機は同じフロアを横移動させるための機器であるのに対して、垂直搬送機は異なるフロアへ縦移動させる機器になります。最近の倉庫では建物内に設置されていない方が珍しいほど定番の機器となっています。エレベーターとは異なり垂直搬送機は自動で搬送してくれるため、エレベーターよりも素早く移動させることができるメリットがあります。
④ 自動積み付け(パレタイズ)機
ケースに梱包された物品をパレットに自動で積み付ける機器です。ケース数が多い場合や重量物である場合などに効果的です。パレタイズは作業員にとって大きな負荷がかかる作業であるため、作業員に代わりロボットが自動で行う事によって、作業負荷の軽減や省人化が期待できます。
⑤ 製函機
折り畳まれている状態の段ボール資材を自動で開けてくれる機器です。1日に1千個、1万個単位の物品を出荷している場合、人力で段ボール資材を開封するのは膨大な作業時間がかかるため、製函作業の自動化は大変便利です。
4.自動化および機械化する際のリスクは?
倉庫業務の自動化および機械化が実現すれば、既存業務の改善や安定稼働が期待されますが、いくつかのリスクも考えられます。筆者の経験に基づいて以下2点をご紹介します。
① 初期投資
自動化および機械化の検討にあたって最もネックになる部分になるでしょう。特に、自動倉庫の導入にはまとまった額の投資が必要になります。導入から数年で資金を回収することは非常に難しいため、長い期間を想定した計画を練らなければなりません。
② トラブル発生時の対処
自動化および機械化を導入した際には、人力作業では発生し得なかったリスクが発生します。例えば、機械トラブルやシステムエラーなどです。機械の部品交換が必要になればその部品が届くまで、システムエラーであればその復旧まで、業務を停止しなければならない場合があります。機器メーカーやシステム運用会社の担当者でなければ対処できないケースもあり、顧客に大きな迷惑をかける事になります。
(余談ですが筆者の場合、停電によって自動倉庫が全く使えない状態になってしまった事がありました。それはとても古い自動倉庫で、棚の高所に保管されている商品を取るためにはしごを使って上り下りしなければならず、当然、通常の業務時間では作業完了が間に合わないのでその時は深夜まで作業をしました。自動倉庫は通常時はとても頼りになりますが、非常時には人力作業時よりも復旧が遅れるリスクがあることを忘れてはいけません。また停電、地震などに備えた自動倉庫もあるため、現在では筆者の例はほぼ発生し得ない事象かもしれません。)
5.まとめ
倉庫内の作業を人力から自動化および機械化することで、省人化を期待できます。今後も引き続き人員不足が見込まれますから、自動化および機械化を積極的に導入検討したいところです。ただし、機器の導入が成功することもあれば失敗することもあります。残念ながら導入した機器が使い物にならず、経営における負の遺産となった事例もあります。期待通りに効果を得られるのか、リスクを過小に評価していないか、慎重に検討しましょう。
自動化および機械化を成功させるために物流コンサルタントに相談してみるのも良いでしょう。機器を導入する際にはそのメーカーと交渉することになりますが、メーカー担当者としてはなんとか自社製品を売り込もうと必死にメリットをアピールしてくるかもしれません。冷静に判断するために、第三者の立場である物流コンサルタントに対して公平な意見や提案を求めてみてはいかがでしょうか?
導入検討にあたっては、是非鈴与シンワートまでお気軽にお問い合わせください。仮想空間で自動化および機械化を再現するデジタルツイン技術を活用し、より正確な効果の検証を提案します。