
倉庫・物流センターの作業効率化や労働力不足の対応、作業者負荷軽減などを目的としてAGVやAGFなどの物流自動化装置の導入が広がっています。
物流自動化装置導入にあたり、導入目的をまとめ、実現するための物流自動化装置を見定め、保管・業務・システム設計を進めていきますが、物流自動化装置の導入知見の少ない企業にとっては新たな挑戦であり、注意点を見落して導入をうまく進めることができなくなることがあります。
そこで、4回に渡り、物流自動化装置導入案件参画経験のあるコンサルタントから見落としがちな注意点をピックアップして解説します。
第1回:倉庫、施設や設備について 第2回:物流自動化装置について 第3回:物流自動化装置の導入プロセスについて 第4回:WES(倉庫運用管理システム)について(本コラム) |
物流自動化装置について注意すべき点(第4回 / 合計4回)
『倉庫への物流自動化装置、WES導入時の注意事項』についてお伝えします。第1回は『倉庫、施設や設備』に関する注意点について、第2回は、『物流自動化装置、導入する対象機器』についてお伝えしました。第3回は、『導入プロセス』についてお伝えしました。
最終回は、WES(倉庫運用管理システム)についてです。
前回同様今回も鈴与シンワートのコンサルタントが案件に参画してつくづく実感して得た教訓をもとに記載し、またWESを入れない方が良いと考えるケースも記載しますのでお役立ていただければ幸いです。
WES(倉庫運用管理システム)の導入について注意すべき点、懸念内容
プラグイン
注意事項
- 初期導入、および今後導入予定の物流自動化装置のプラグラインをWESが有していること
懸念内容
- WES導入による開発期間・コスト削減の恩恵を享受するためには、WESにユーザーが使用する物流自動化装置のプラグインが標準で備わっている必要がある。
- プラグインが準備されていない場合、カスタマイズの開発が生じてしまいWES導入のメリットが低減する。
機能性
注意事項
- 自社の要望に近いWESの機能を有するシステムを選定する必要がある
懸念内容
- 自社の要望する機能とWESパッケージの機能とのギャップが少ないほど、導入期間・コストを減らすことができる。機能が不足している場合は機能追加が必要となり、機能が過剰な場合は不要な機能の費用を支払うことになる。
- 装置にGUI機能が必要な場合、それらが提供されているか、必要とする特定業務の機能があるかなど、一言でWESに括られているが、各社の機能は様々で、ギャップとなる要素は多く存在する。そのため、自社の要望を明確にし、WESパッケージを選定する必要がある。
- WMS(倉庫管理システム)とWCS(倉庫制御システム)の間に入るのがWESなので、WMS/WCSが提供している機能の充足度や思想にも大きく左右される。WCSにない場合はWES側で本来WCSの領域であるべき機能を構築するケースもある。
- 付加価値機能ともいえる可視化やデータをAIで分析して最適化を行う機能を持つものも存在する。
ベンダーの特徴
注意事項
- WESパッケージだけに着目せずにベンダーの特徴が要件を満たしていること
懸念内容
- WESベンダーの成り立ちによりハード、ソフト、ベンダー担当者スキルの制約内容がユーザー要望を実現する際に弊害となることが懸念される。
- 例えば、マテハンメーカーとしてWESを開発している場合、自社製品を統合的に管理することには長けているが、他メーカーの物流自動化装置接続は基本的に行わない。WMSメーカーとして物流自動化装置との連携実績を踏まえてWES開発している場合、上位システムとなるWMSもセットでの導入が基本となる。工場のライン制御やマテハン導入の経験から発展したWESの場合、物流業務の知見が不足している場合がある。
WESの特徴
注意事項
- 上位システムと物流自動化装置の間にWESを組み込むデメリットを踏まえて検討すること
懸念内容
- WMS等の上位システムと物流自動化装置を制御するWCSの間にWESを設けることで統合的な制御ができるメリットはあるが、WMSとWCSの間にWESが追加されることによる導入・稼働時の工数増加やコスト増加を踏まえて評価する必要がある。
- 例えば、3システムのデータ連携のタイミングや項目の紐づけや明細行の粒度の設計などはWESを介さない時よりも煩雑となる。
- また、サーバやネットワークなどのITインフラについても導入・稼働時の工数やコストが増える。
- 狭い範囲での物流自動化装置導入に留める場合は、上位システムにて物流自動化装置の制御を行う方法が適している場合もある。
鈴与シンワートの物流コンサルタントの感想・見解
導入する装置に対して必要な機能を洗い出したとき、WESがその機能を有していることが望ましいが、含まれていないことが多い。
理想はWMSとWCSの機能をベン図で書いたときに重なりが少なく、WESをそのベン図に書き足したとき、歯抜けに成らないことである。
理想とは言えないにしても、重なりすぎ、スカスカでないことを確認する必要がある。
WESを入れない方が良いケース
必要がない
費用対効果が出ない。WCS連携を一本化できるのが最大のメリットなので連携自体が少ない場合、コストメリットは出にくい
合わない
個別要件や海外(非対応)メーカーが多くなるとプラグインが使えず、カスタマイズが多くなる
付加価値機能である可視化を目的としてのWES導入には疑問が残る
WMS側でできれば不要。マテハン連携実績があり、WMSオプションで提供されるなら、あえてWESを導入する必要はない
本当にWESを導入する必要があるのか、導入する場合どのWESパッケージが良いのかなど十分に検討をする必要がある。
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