倉庫・物流センターの作業効率化や労働力不足の対応、作業者負荷軽減などを目的としてAGVやAGFなどの物流自動化装置の導入が広がっています。
物流自動化装置導入にあたり、導入目的をまとめ、実現するための物流自動化装置を見定め、保管・業務・システム設計を進めていきますが、物流自動化装置の導入知見の少ない企業にとっては新たな挑戦であり、注意点を見落して導入をうまく進めることができなくなることがあります。
そこで、4回に渡り、物流自動化装置導入案件参画経験のあるコンサルタントから見落としがちな注意点をピックアップして解説します。
第1回:倉庫、施設や設備について(本記事) 第2回:物流自動化装置について(後日公開) 第3回:物流自動化装置の導入プロセスについて(後日公開) 第4回:WES(倉庫運用管理システム)について(後日公開) |
倉庫、施設や設備について注意すべき点(第1回 / 合計4回)
『倉庫への物流自動化装置、WES導入時の注意事項』の初回はまずは器となる建屋、『倉庫、施設や設備』に関する注意点を記載します。物流自動化装置の導入を検討する場合、新たな倉庫、既存倉庫の両ケースがあると思います。新たな倉庫の場合、そもそも立地に関する観点も不可欠ですが、本コラムではどちらのケースでも当てはまるように建屋、『倉庫、施設や設備』に絞って記載致します。
倉庫、施設や設備について注意すべき点、懸念内容
倉庫仕様
レイアウトや構造体
注意事項
- 自社目的・ニーズに適したレイアウトの倉庫を選ぶ必要があること
懸念内容
- 大型装置
防火区画に跨る装置、例えば自動倉庫であったり、コンベヤーであったり、大型の装置を導入する場合は、倉庫の広さや高さ等の仕様だけでなく、躯体、壁や防火シャッターの作りや場所を考慮する必要がある。自動倉庫であれば2区画に分かれる、コンベヤーであればつなぎ目が発生するケースもある。壁に関してはオールシャッター仕様の倉庫も存在し、初期/原状復帰費用及び工期の削減も含め、使い勝手の良い倉庫もあるが、まだまだ少ない。 - 間取り
上下階での運用、車路を挟んで同一フロアで運用等、複数区画での運用が発生する場合や区画間の運搬自動化を行う場合は相当の対応が必要となる。 - 導入ロードマップ
中長期的に増やして行く場合、装置の新規導入により無駄な作業動線となってしまい期待する生産性・ROIを満たさないことや、希望するマテハンが設置できない問題が生じる懸念がある。導入のロードマップ 等を作り、戦略的、計画的な導入が必要となる。
床荷重
注意事項
- 耐荷重やアンカーの打てる深さ・位置など、倉庫の床が物流自動化装置を扱うための基準を満たしていること
懸念内容
- 自重が重い装置
床の耐荷重が足りないために大型の物流自動化装置を動作させることができない問題が生じる。例えば海外メーカーのオートフォークリフト、自重が重く一定以上の重さの荷物を取り扱う場合には注意が必要。 - 深めのアンカーを打つ際に必要な装置
物流自動化装置をアンカーで固定する必要がある場合、安全に使用するための基準を満たせず、導入できない場合がある。例えばアーム型パレタイザーは動作時に遠心力が加わるケースがあり、深めに打たなければならない場合もある。
電気仕様
電気容量
注意事項
- 電気設備が要件に一致していること
懸念内容
- 自動化/電力を必要とする度合
必要な電力を供給できないことで物流自動化装置の導入を断念せざるを得ない場合がある。工程の全自動化に近づくと10~15VA/㎡では電力が不足する場合がある。
その他
庫内に事務所等のスペースを設置する場合
注意事項
- 空調や防塵の対策を踏まえ、実現性と経済性を十分考慮する必要があること
懸念内容
- 庫内スペースの事務所仕様化
自動化機器を制御・管理するためには機器や管理用端末以外にシステムサーバが必要である。可用性やセキュリティ等の観点から倉庫内の非機能スペースにサーバ等を設置したいが、事務所スペースがなかったり、狭かったりとの理由で庫内に別途スペースを確保して設置する場合、サーバ等の設置を考慮していない庫内では十分な空調(最悪の場合、床や壁の断熱塗装対応)と防塵、セキュリティ等の対策必要となる。
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